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2016/08/23 up

裁判員制度で個人事業主が裁判員に選ばれたら、その日当は確定申告するの?

text by 松木淳

裁判員が裁判終了後にもらえる、裁判所名とシリアルナンバーが入った特製ピンバッジ

裁判員が裁判終了後にもらえる、裁判所名とシリアルナンバーが入った特製ピンバッジ(私物)

個人事業主が裁判員に選ばれたら、会計上で何か必要な手続きはあるのでしょうか? 裁判員制度と確定申告の関係について、解説します。

そもそも裁判員制度とは?

裁判員制度は、殺人や放火などの比較的重い刑罰が対象となる刑事裁判に、事件ごとに国民から選ばれた6名の裁判員が参加する制度で、2009年にスタートしました。被告人が有罪か無罪かを判断するだけの陪審制とは異なり、有罪の場合はどのような刑罰を課すかも決定します。3名の裁判官と一緒に刑事事件の法廷に立ち会うのはもちろん、被告人へ直接質問することができます。

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個人事業主は辞退しやすい?

裁判員は原則として辞退することができません。ただし、「70歳以上」「重い病気やけが」「育児」など法律などで定められた理由に該当し、裁判所が認めた場合には辞退することが可能です。仕事を理由とした辞退については、最高裁判所が運営する裁判員制度のサイトに、下記のように記載されています。

仕事が忙しいというだけの理由では,辞退はできないことになっています。ただし、とても重要な仕事があり、ご自身が処理しなければ事業に著しい損害が生じる場合や、裁判員になることにより自分自身やまわりの人に経済上の重大な不利益が生じる場合には,辞退が認められることになっています。

仕事を理由とする辞退が認められるかどうかは、具体的なご事情をお伺いした上で事件を実際に担当する裁判所が判断することになります。たとえば、次のような観点から総合的に判断されることになります。

(1)裁判員として職務に従事する期間
(2)事業所の規模
(3)担当職務についての代替性
(4)予定される仕事の日時を変更できる可能性
(5)裁判員として参加することによる事業への影響
(出典:裁判員制度ウェブサイト)

上記の事情がある場合は、選任される過程で提出する「調査票」や「質問票」で辞退の旨を回答するほか、「選任手続期日」に直接申し出を行うこともできます。個人事業主は自分の代わりに仕事ができる存在がいないことが多いため、経済的に重大な不利益が生じることが明確であれば、その旨を申し出るのも1つの手といえます。

また、裁判員制度はある日突然「裁判員として裁判所に来るように」という連絡があるわけではありません。最高裁判所から「裁判員候補者名簿への記載のお知らせ」の書類が届き、翌年は刑事裁判が開かれる際に裁判員として選ばれる可能性があることが通知されます。その後、事件ごとに裁判者候補名簿の中からくじ引きで裁判員候補者が選ばれ、選ばれた人には呼び出し状が届きます。届いた人は選任手続期日に裁判所へ向かい、最終的に6人の裁判員が選ばれるのです。

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個人事業主は、裁判終了後に振り込まれる日当を確定申告する必要がある!

裁判員制度では、裁判員として従事した日数分の日当が裁判所から支給されます。日当の金額は下記範囲内で、「選任手続」「審理」「評議」の時間に応じて決定します。

・裁判員候補者、選任予定裁判員(選任手続)……1日当たり8,000円以内
・裁判員、補充裁判員……1日当たり1万円以内※最高裁判所規則で定められた方法での旅費と、遠隔地で宿泊が必要な場合は宿泊費も支払われます。

支給された日当や旅費は雑所得に該当します。そのため、その他の雑所得と合わせて、確定申告をしましょう。なお、裁判所までの交通費は必要経費として、この日当から差し引くことができます。

日当があった場合の、確定申告における所得の計算方法は以下の通りです。

■雑所得以外と本業(事業)以外に収入がない場合事業収入-必要経費=事業所得……1
裁判員の旅費、日当-裁判所までの交通費や宿泊費=雑所得……2
1+2=所得金額
※裁判員としての日当以外の雑所得がある場合、2に加算する必要があります。

例)裁判員としての雑所得
仮に旅費、日当1万2,000円をもらい、実際に負担した交通費が4,000円だった場合。
1万2,000円-4,000円=8,000円
※雑所得の計算のしくみ上、裁判所までの交通費等は必要経費として差し引くことが可能です。

ちなみに、企業に勤める給与所得者の場合、本業以外の所得が年間20万円未満であれば、確定申告の必要はありません(2社以上勤務している場合は必要)。

裁判員として選ばれるのは2014年の実績で約1万800人に1人の割合。確率にして0.009%程度です。さらに、制度が始まってから2014年12月までに裁判員に選ばれた4万1,834人のうち、個人事業主は7.1%。この数字から見ても、裁判員として刑事裁判に参加することはめったにあることではありません。とはいえ、選ばれたときに慌てないためにも、「裁判員に選ばれたら確定申告が必要になる」ということだけは覚えておきましょう。

(松木 淳+ノオト)