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2017/04/18 up

会計ソフト? 記帳代行? 税理士? ニーズ別個人事業主の会計サポート

text by 杉本康

悩む男性

個人事業主の会計業務をサポートするサービスやツールは、数多く存在します。しかし、これらの内容を把握している人は少ないはず。

そこで、会計ソフト、記帳代行サービス、顧問税理士という3つの選択肢について、それぞれの特徴とどんなタイプの人が選ぶべきなのかを解説します。

自分で記帳をする場合は、会計ソフトにメリットあり

個人事業主が確定申告をするためには、日々のお金の流れを帳簿付けすること(記帳)が必要です。まずは、この記帳業務を自分で行うか、誰かに任せるかで使うべきサービスの種類が分かれます。

自分で記帳を行う場合は、会計ソフトを使うことが一般的です。会計ソフトを導入するメリットは、下記のとおりです。 

(1)業務の効率化

会計ソフトを使えば、日々の仕訳を入力していくだけで、総勘定元帳や65万円控除の青色申告に必要な貸借対照表、最終目的である確定申告書までもが、ほぼ自動的に作成されます。そのため、会計業務の効率化が図れます。

もし会計ソフトを使わないと、必要な書類をすべてイチから作成することになります。特に確定申告時期には、時間と手間がかかってしまうでしょう。

(2)ミスの減少

会計ソフトを使った場合、仕訳の数字に矛盾があると、その矛盾が生じた時点でエラーが表示され、そもそも入力できないようになっていることがほとんどです。そのため、ミスが少なくなります。また、月末や年末に帳簿をまとめてつけた後、矛盾に初めて気付く……という状況も回避できます。

帳簿付けが進んでから貸方と借方の数字が合わないことに気づき、原因を突き止めて修正するのは大変手間のかかる作業。ミスの回避は、時間の節約にもなります。

(3)税制改正など、変更点に自動で対応できる

確定申告についての知識は、毎年刷新しなければなりません。細かな税制改正は毎年のように行われますし、マイナンバーの記載といった様式の変更もあります。

会計ソフトを使わない場合は、毎年、税金の計算方法や申告書の記載に変更点はないか、変更がある際はどういった対応が必要かなど、すべてを自身で確認しなければなりません。会計ソフトを使っていれば、毎年のアップデートをするだけで自動的に変更点に対応することができます。

なお、個人事業主が会計ソフトを導入する際は、年1万円程度のコストがかかります。それに対して、パソコンやタブレットなどを使って自分で帳簿のフォーマットを作成したり、文房具屋で帳簿を購入して手書きで記入したりすれば、圧倒的にコストダウンできます。会計ソフトを使うメリットを十分に理解した上で、どちらがいいかを検討すべきでしょう。

■会計ソフトを使うならクラウド会計がオススメ

会計ソフトには、従来から存在するインストール型と、近年定着しつつあるクラウド型の2種類があります。インストール型は、CD-ROMやウェブサイトからのダウンロードによってパソコンにインストールするもの。よって、会計ソフトはインストールしたパソコンでしか使えません。

一方のクラウド型は、サービスのウェブサイトでアカウントを取得し、ログインして使うものです。つまり、ネット環境さえあれば、パソコン、スマートフォン、タブレットなどのデバイス、また場所も選ばずに利用できます。インタフェースもシンプルでわかりやすいものが多く、これまで会計ソフトを使ったことのない人でもなじみやすいでしょう。

また、ネットバンキングのアカウントを同期すれば、金融機関の取引結果が自動的に仕訳されていくなど、クラウド型の会計ソフトには便利な機能が多いのも特徴です。

近年の技術開発やネット環境の整備を背景に、インストール型の弱点を克服したものがクラウド型といえます。これから新しく会計ソフトを導入する人は、クラウド型を選ぶ方がいいでしょう。

■会計の知識がない人には相談先がある

会計や確定申告について、まったく知識のない人は、会計ソフトを使いこなすのは難しいでしょう。そこで紹介したいのが、正しい会計処理について相談できる機関です。

正しい会計処理や記帳の仕方について相談ができる機関には、主に税務署、商工会議所・商工会、青色申告会があります。これらはいずれも、いつでも相談ができる機関です。なかには定期的に勉強会を開催しているところもあり、積極的に活用するとよいでしょう。それぞれの特徴は、下記のとおりです。

・税務署税務署は、無料で相談できるのが一番のメリットです。電話相談窓口であれば、匿名で質問ができるので、多少聞きにくいことでも聞くことができます。

・商工会議所や商工会商工会議所や商工会は市区町村に設立された公的団体で、中小企業事業主や個人事業主が業種に関係なく加盟しています。加盟すると、資金調達の相談ができたり、ビジネスマッチングなどのサポートを受けられたりするほか、共済へ加入できたり、割安で健康診断を受けられたりなどの福利厚生も受けられます。

加盟にかかる費用は、商工会議所ごとに決められています。なお、東京商工会議所では、個人事業主の場合、加入時に3,000円、年会費として1万円がかかります。

・青色申告会青色申告会とは、青色申告を推奨している小規模事業主や個人事業主が集まった一般社団法人です。基本的には、一つの税務署に一つの青色申告会が存在します。

サービス内容は会ごとに多少変わるようですが、商工会議所や商工会と同じく、資金調達の相談ができたり、福利厚生を受けられたりします。会費は、加入する際の費用として3,000円程度、月会費として2,000円程度が相場となっています。

会計業務に苦手意識があるなら、記帳作業の代行サービスを

会計業務を誰かに任せてしまうという選択肢もあります。会計ソフトは便利ですが、知識や経験がないと使いこなすのは難しいもの。かといって、イチから勉強するのは面倒だし、時間がかかります。それならば、記帳業務をアウトソーシングするのも手段の一つです。

記帳作業のアウトソーシングを個人事業主が利用する場合、費用は月1,000円から1万円が相場。ただし、売り上げや仕訳量などに応じて費用は変わります。ただ領収書や請求書などをまとめて郵送するだけで、確定申告に必要な数字をまとめてくれます。

この方法のメリットは、専門知識が不要で、書類を送りさえすれば自分の時間を一切削らずに済むこと。費用も、経理担当者を一人雇うよりはるかに安い金額で済みます。さらに、多くの記帳代行サービスでは、65万円控除の青色申告に対応した水準で帳簿付けが行われるため、節税の観点でもメリットがあるといえるでしょう。

税制改正により、2014年1月からすべての事業所得者に記帳が義務付けられています。きちんと帳簿付けができていなければ、税務署から追徴金を請求されるケースも考えられます。どうしても帳簿付けが苦手という人は、こうした費用も必要経費の一部と割り切るのがいいのかもしれません。

税理士ならば、税金や会計にまつわるあらゆる面でのサポートも

税金や会計について誰かに一任したり相談したりする……となると、初めに思い浮かぶのが税理士です。とはいえ、一口に税理士が提供するサービスといっても、その内容はさまざま。一人ひとり、専門とする分野が異なりますし、飲食業、建設業、理美容業といった多くの業種のうち、特定の分野に絞ってサービスを提供している税理士も少なくありません。

また、記帳だけが仕事ではなく、事業自体のコンサルティングや経営のアドバイスをしてくれる税理士も多く存在します。確定申告書の作成や税務調査の対応など、本人以外には税理士でないと対応できないことも多々あります。そのため、税理士は税金や会計のあらゆる面でサポートしてくれる心強い存在といえるでしょう。

費用は、個人事業主の場合、月に1万円~3万円が相場。ただし、売上高や訪問頻度などによって価格は変動します。

なお、なかには記帳代行サービスを提供していない税理士事務所もあります。その場合は、自分で記帳した帳簿を税理士にチェックしてもらう「自計化」というサービスが提供されます。先述の通り、確定申告書の作成・提出は自分以外には税理士しかできない業務。確定申告書を作成する税理士に記帳も依頼したいならば、双方に対応している税理士を探したほうがいいでしょう。ただ、記帳を依頼すれば、自計化と比べて一般的に費用は高くなります。

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ニーズ別、あなたに適した会計サービスはコレだ!

ここまで、会計ソフトを利用して自分で記帳するパターン、記帳代行サービスを利用するパターン、税理士にすべて丸投げするパターンと、さまざまな選択肢があることをお伝えしてきました。最後に、ニーズ別でオススメの選択肢をご紹介しましょう。

(1)「会計のことに時間を使うなら本業に時間を使いたい」人→記帳代行サービス

開業したばかりでとにかく売り上げを上げることだけに集中したい、多忙になってきて業務の一部をアウトソーシングしたい、会計のことはよくわからないが勉強する時間を節約したい……。このように、ある時間はすべて本業に注ぎたいという人には、記帳代行サービスをオススメします。

正しいかどうかわからないまま自分で記帳をするのは、意外にストレスになるものです。会計業務をするために個人事業主になったわけではないですし、会計業務の大変さで本業がおろそかになってしまうのは本末転倒。任せられるところは任せて、時間を有効活用しましょう!

(2)「ある程度、会計の知識があり、自分で出納管理をしたい」人→会計ソフト

ある程度、会計まわりの知識があってコツコツ会計業務をこなすのも苦ではない、せっかくなら勉強しながら自分で会計業務をやりたい、とにかくコストを削りたい……。このように、自分で出納管理をしたいという人には、会計ソフトの導入をオススメします。

日々、自身で会計業務を行うメリットは、何と言っても、数字に基づいた経営状況をタイムリーに把握できることです。クラウド型の会計ソフトであれば、パソコンを持ち歩かずとも、タブレットやスマートフォンでデータを確認できます。自分ではわからないことを相談できる機関をうまく利用しながら、日々の会計業務に取り組んでいきましょう。

(3)「会計業務だけでなく、税理士に経営までしっかりとみてもらいたい」人→税理士

事業が安定してきて費用的にも税理士に任せる余裕があり、会計業務を任せるだけではなく数字をもとに経営や節税のアドバイスがほしい……。このような人には、税理士に相談することをオススメします。

もちろん契約する税理士や支払う顧問料にもよりますが、顧問税理士は定期的に相談できる心強い経営の参謀役となり、事業拡大にも一役買ってくれるでしょう。記帳代行をお願いできるかどうかも含めて、自分のニーズに合った税理士との契約を検討しましょう。

同じ個人事業主でも、会計業務に対するモチベーションは人それぞれ。ただ、会計業務ではじき出される数字は経営上、非常に重要な意味を持ちます。どのようなサービスが存在するのかを把握し、自分のニーズも整理した上で、最適な選択をしたいものです。

(杉本康+ノオト)