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2019/06/26 up

「クラフトコーラで世の中に驚きと感動を与えたい!」 伊良コーラ代表・小林隆英さん

text by 関紋加

撮影=栃久保誠

世界中で多くの人々から愛される「コーラ」。コンビニや自販機などでも気軽に味わえますが、実は世界初のクラフトコーラ専門店が日本にあるのをご存じでしょうか。その名も「伊良(いよし)コーラ」。

コーラの実やカルダモン、ナツメグなど10種類以上のスパイスとかんきつ類をブレンドするオリジナルのクラフトコーラ製造を手掛けているのが、小林隆英さんです。

会社員生活の傍らレシピ研究を続けて開業に至るまで、そして味のこだわりについて伺いしました。

ネットで見つけたレシピでコーラ作りをスタート

――コーラを作り始めたきっかけを教えてください。

もともとコーラが好きで、よく飲んでいました。学生時代に海外を回っていたとき、さまざまな国のコーラを飲んで、その土地ごとの味があることを知りました。

私は偏頭痛持ちなのですが、標高の高い土地で過ごす際、予防策としてコーラを飲むこともありましたね。コーラに含まれるカフェイン成分が痛みを鎮めてくれるんです。

でも、よく飲んでいるのに背景やストーリーを意外に知らなくて。単純に「コーラってなんだろう?」と思い検索してみたら、コカ・コーラ社の金庫から漏れたと言われる、100年以上前のオリジナルのコーラレシピを見つけました。それを元に、自宅で作ってみたのが始まりです。

――作ってみようとする発想がすごいです。

実は、祖父が和漢薬の職人だったんです。そのため、幼いころから自然や植物が好きで、薬草を混ぜ合わせる手伝いをしていました。大学に入ってからも農学部で分子生物学を専攻して、いろいろな実験を行っていたこともあり、興味が沸いたんですよね。

僕にとって、コーラ作りはたくさんのスパイスを煮詰めて、完全に調合しきったひとつの完成物を作る作業で、実験と似たおもしろさを感じました。

――初めて作ったコーラはどんな味でしたか?

一応、味としてはコーラっぽいものができました。でも、近からず遠からずというか……。あくまでコーラ風味のシロップという仕上がりでした。誰かに飲んでもらって、驚きや感動を与えられるクオリティではなかったので、追求してみたくなったんです。

――具体的には、どのように追求していくのでしょうか?

スパイスはどう混ぜ合わせるかが重要です。スパイスはホール(原型)なのか、パウダーにするのか。かんきつ類にしても、煮出すのか、皮だけを削ってオーブンで焦がすのか、そしてその割合をどうするのか……、と試行錯誤の繰り返しでしたね。

――コーラを手作りしている人って、なかなか聞きません。誰かにアドバイスをもらえるってこともないですよね。

そうですね。その点については学生時代の実験や、その結果を次に生かす作業が役に立ったと思います。人の意見を聞くよりも、自分のものさしを大切にしたいな、と。毎日飲んでいる自分の舌を信じて判断すれば、絶対に良いものができると信じていたので。

――一部のスパイスは個人輸入しているそうですが、どのようにして行うのでしょうか?

まずは、現地の総領事館に電話して、自分がやっていることを説明しました。そこから、スパイスの輸入に携わっている人を教えてもらって、メールでコンタクトをとる流れでした。ちなみに、コーラの実はガーナから輸入していますが、市場に行ってもらうところからお願いしました。

――当時は会社員とのことで時間も限られていると思いますが、どんな気持ちだったのでしょうか?

最初は楽しかったですね。でも、ある程度求める味に近づきつつも、やっぱりコーラシロップの域を超えることは難しくて。売り物にするにはまだまだで、人に感動を与えるものを作りたいと思ってからは、壁を超えられない辛さもけっこうありました。3年ほど向き合った結果、ようやく納得のいくレシピが完成しました。

販売開始から5カ月後にクラウドファンディングを達成!

――2018年7月に移動販売車「カワセミ号」での販売からスタートされたと聞きました。移動販売車での販売を選んだ理由はなぜでしょうか?

夏を迎えるタイミングでなるべく早くスタートしたかったのと、まずは小さく始めてみようと思ったからです。限られたお金の中でトライアル的にやってみて、仮にダメでも大きな痛手はないかな、と。

ブランドのモチーフに動物を使いたいと考えていたのですが、モチーフにしたカワセミは英語「king fisher」と呼ばれる、水に飛び込む鳥です。自分の「コーラの常識や既成概念を壊すように、挑戦していきたい」という想いにぴったりだったので、ロゴに用いました。

――どこで販売を始めたのですか?

毎週土日、青山の国連大学前で開催しているファーマーズマーケットで販売を開始しました。ありがたいことに最初から男女幅広く、たくさんの人に飲んでいただくことができました。

スパイスが効きつつも、優しいフレーバーをしているので、「普段は飲まないけれど、このコーラはおいしい」「身体に良さそうな味がする」などの感想もいただけて。今まで世の中になかったものとして、驚きや喜びを感じてもらえたみたいです。

――同年12月にはクラウドファンディングで200万円以上の資金を集められていましたよね。その使い道は?

より多く全国の人に届けるため、通信販売をスタートしたかったのと、祖父の工房をクラフトコーラファクトリーに改装するための費用に当てさせてもらいました。知名度があまりなかったのですが、一人ひとりに地道にお願いして達成できました。退職して、本格的にコーラ作りを仕事にしたのも、このタイミングです。

祖父の知識や技術も詰まったコーラをたくさんの人に届けたい

――伊良コーラのおいしさの秘密を教えてください。

使用しているのは、コーラの実、カルダモン、シナモン2種、オレンジピール、黒胡椒、コリアンダーシード、ラベンダー、バニラビーンズ、エゾウコギ、ナツメグ、ジンジャー、クローブです。

下処理や寝かせる時間もあるので、シロップはトータルで約1週間かけて作ります。レシピの工程は、私しか知りません。

夏は清涼感のあるカルダモンを、冬は身体を温めるジンジャーを多めにするなど、少し季節によって調整することもあります。飲む人の体調や気分に合わせてアレンジすることもできたらいいなと思います。

――エゾウコギはどういったものですか? あまり聞き慣れないのですが。

和漢方の生薬です。味の影響はほとんどないのですが、滋養強壮剤の成分として入れています。「コカ・コーラ」はアメリカの薬剤師であるジョン・ペンバートンが開発したのですが、もともとは栄養ドリンクのような、人の健康を祈って生まれた飲みものなんです。

私もその精神を大切にしたいなと思っていて、祖父が残してくれた漢方の本を読んで、今も日々勉強しています。

1パック:500円(税込)

――パッケージもとてもかわいいですよね。

ありがとうございます。パックのメリットは、見た目がキレイなコーラと相性がいいところ。スパイスの粒も見ることができます。持って帰って洗ってもらえば、小物入れとしても再利用できますよ。

――実際に飲んでみて、スパイスの風味がすごく爽やかに口の中で広がりました。

先日、コーラ好きのお客さんに「伊良コーラには、ほかでは味わったことのない味のストーリーがある」と言ってもらえたんです。

伊良コーラは香水に例えると、トップノート、ミドルノート、ラストノートのように味の余韻を意識して作っています。これまでの自分の経験、そして祖父から引き継いだ知識や技術もつめた味が、ほかのクラフトコーラとの違いです。

▲通信販売している「魔法のシロップ(250ml)」(3,150円・税込)は、炭酸水はもちろんビールやウイスキーで割るのもおすすめだそう(画像提供:小林さん)

――なるほど。では、今後の展望を教えてください。

今は、青山ファーマーズマーケットの移動販売車での販売がメインなので、ファクトリーの一角での常設販売も始められたらいいですね。

製造も自分一人では限界があるので、弟子みたいな人と一緒にできたらうれしいですし、より多くの人に知ってもらうためには、会社として大きくしていきたい気持ちもあります。

今年9月には、日本の魅力的な味を取り入れた新しいコーラのシロップを限定販売する予定です。

伊良コーラに出会った人が、おいしさと手作りである事実に驚き、世界を見る目が少しでも変わったり、ちょっとだけハッピーになったりしてくれたら、幸せだと思っています。

――小林さんのようにこれから新しいことにチャレンジしたい人に、アドバイスをお願いします。

僕もはじめは会社員生活と並行していましたが、これは自分にしかできない仕事だと思い、独立を決意しました。新しいことを始めるときは、周囲のいろいろな意見があると思いますが、チャレンジしたいことがあるのなら、「好き」「得意」「世の中に求められているか(貢献できるか)」、この3軸をしっかり見極めることが大切だと思います。

(取材・文:関紋加/ノオト 編集:ノオト)

取材協力

小林隆英さん

世界初のクラフトコーラメーカー「伊良(いよし)コーラ」代表。世界でたった一人のコーラ職人。平成元年、東京生まれ。幼少期より自然に親しみ、北海道大学農学部にて農学を学ぶ。漢方職人だった祖父の跡を継ぎ、2018年、伊良コーラを立ち上げる。

伊良コーラ:http://iyoshicola.com/

この記事の筆者

関紋加

有限会社ノオト所属の編集者、ライター。ヨガウエアやオーガニックコスメの販売経験から、好きな分野は料理、美容、健康、ライフスタイルなど、毎日の暮らしにまつわるなにげないこと。現在は、企業のオウンドメディアを中心に活動中。趣味は、食べ歩きとミュージアム巡り。

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