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2019/05/29 up

営業やコンサルも請け負う“次世代型秘書”の道を開拓! フリーランス秘書・酒井麻衣子さん

text by 末吉陽子

撮影=小野奈那子

秘書の仕事と聞くと、スケジュール管理やお礼状の発送など、忙しい社長をきめ細かくサポートするイメージが強いかもしれません。しかし最近は、ひとつの企業に属さず、複数の企業から委託を受けるフリーランス秘書という働き方があるそう。しかもその業務内容は、裏方仕事のみならず、人事や営業などの業務を担うことも。

今回、お話を伺った酒井麻衣子さんもまた、“売り上げを上げる秘書”として活躍している一人。仕事への想いやフリーランスのメリットデメリット、新しい秘書のかたちを模索する理由について教えてもらいました。

気遣いを経営者が評価。未経験からフリーランス秘書に

――酒井さんは秘書として独立5年目を迎えるそうですが、それまではどのような仕事を?

新卒では、ITベンチャーに入社しました。大手企業は業務が細分化されていて、ベンチャーの方がいろいろ挑戦できそうだなと思ったのです。人と話す仕事が向いていると感じて営業を志望しました。いい上司や先輩、クライアントに恵まれて充実していましたし、夢中で頑張った結果、営業成績1位も獲得しました。

4年ほど勤務してから、キャリアアップのため、セミナーや研修を行うコンサルティング会社に転職。セミナーの運営やお客さまのフォロー、集客の業務をメインで行っていました。独立までに勤めたのは、この2社ですね。

――会社員時代は、秘書ではなかったんですね。なぜ、フリーランスの秘書になろうと思ったのでしょうか?

2社目のコンサルティング会社で、毎月1回のペースでコンサルティングも行っていました。翌月までの目標と行動内容を一緒に決めるのですが、1カ月経っても計画が進まないクライアントも。多くの経営者の悩みが、時間もない、人もいないという理由からくるもので、「真剣に手伝ってほしい」とお誘いいただくこともありました。ただ、会社員だと難しかったので独立を決意。未経験ではありますが、「何でもお手伝いする存在です」と伝えるには肩書きとして分かりやすいかと思い、秘書と名乗ることにしました。

――経営者のみなさんは、酒井さんのどのようなところを評価されたと思いますか?

フォローが手厚かったところかもしれません。例えば、年賀状や誕生日に手書きのハガキを贈ったり、レスポンスを早くしたり。些細なことですが気遣いを心掛けていたので、そのことを評価いただけたのかもしれません。

業績に貢献できる秘書として新たな境地を目指す

――現在は、どのような仕事をしていますか?

8社の企業と契約していますが、経理や総務、カスタマーからの問い合わせ対応など、さまざまです。前職のクライアントや紹介をいただくなど、これまでの人脈で仕事の依頼を受けることが現在は多いです。以前は、スケジュール調整も担当していましたが、常に隣にいるわけではなく、基本はオンライン上でやり取りするため、ご希望に沿わない場合はお断りするのではなく、別の提案や見合った方を紹介するよう務めています。私は、「売り上げを上げる秘書」を強みにしていますね。

――売り上げを上げるとは、具体的にどのような……?

例えば、ワインを販売している企業から委託を受けたときは、自分でも試飲会などのイベント会場に立ち、ワインを売りました。他にも、「Airbnb」のビジネスを展開していた企業では、物件探しから家具の手配、掃除まで全ての業務を行いながら、人材や売り上げの管理もやらせていただき、旅行者からの問い合わせにも対応していました。また、複数社と契約しているのでクライアント同士の紹介も可能です。上手くマッチングすれば、クライアントの売り上げに結びつくこともあります。

――確かに、従来の「秘書」の定義に当てはまらない内容ばかりですね。

そうですね。もともと営業やコンサルティングでキャリアを積んできたので、売り上げを達成するためのプランニングが好きなのです。いわゆる秘書業務以外にも、「こんなことに困っているから誰かに助けてほしい」というときに貢献できればと思っています。あとは、自分自身が講師になって、コミュニケーション講座やマナー講座、手帳の使い方といったコンテンツも提供できるので、社員研修を考えている企業から依頼をいただくこともあります。

――酒井さんのような秘書の働き方は、これからの時代ますます求められそうですね。

そうですね。例えば、大手企業であれば社長の身近でお世話する仕事が求められていました。それはそれでニーズとして変わらないと思いますが、これからは個々のスキルが一層必要な時代だと思います。同じ秘書でも御用聞きだけに留まらず、プロジェクトの提案や営業など、これまでの秘書に求められていたスキル以上のパフォーマンスを上げられる人が生き残れるのではないかと考えています。

平均年収は600万円。秘書で食べていけなくなってもアイデアで乗り越える

――ちなみに、報酬はどのように設定していますか?

業務によってかなり違いがあり、その都度、お見積もりを相談しています。あとは、業務量が多くても少なくても毎月7万円お支払いいただくユニークなケースもありました。

――ということは年収も変動が激しいのでは?

激しいですね。本当は年収1000万円を目標にしていましたが、いまのところ平均すると600万円くらい。月ごとに波があるので、定期的に価格交渉をして見直してもらえるように働きかけています。そこは強気でいかないと、相対的に安い案件に時間を取られてしまえば本末転倒になってしまいますから。

――フリーランスと収入の安定は難しい問題ですよね。酒井さんは、クライアントから継続的に依頼してもらえるように心掛けていることはありますか?

自分には対応できないような依頼でも「すみません、できません」と言わないようにしています。もしほかに適した人がいれば紹介することも。収入の安定とは逆になってしまうかもしれませんが、そうした心掛けにより人との繫がりが強固になり、また別の機会に依頼をいただくなど仕事の幅が広がっていると思います。

――この先、依頼がなくなったらどうしよう……と不安になることはないですか?

そうですね。ただ、私は講師業もしていますし、アイデア次第で様々なことで売り上げは作ることができると思っています。安心材料として資産運用もしていますし、お金の勉強も始めました。お金の有無は精神状態にも支障をきたすと経験しているので、準備できるときに備えておくに越したことはないですね。

時代が変わっても求められ続ける秘書でありたい

――では、フリーランスでよかったと思う瞬間はありますか?

ひとつは、社長とのお付き合いが多いので、業種問わずいろいろな世界を知れるところです。企業に所属していると、業種に縛られたお付き合いに限定されてしまいがちなので、その点フリーランスだと自由で身軽です。もうひとつは、時間の自由さ。好きなときに、海外旅行できるのは嬉しいです。会社員だと休みが取りにくいですし、どうしても気を使ってしまいますよね。

――多忙に過ごされていると思いますが、日々オンとオフはどう切り替えていますか?

自宅近くに銭湯があるので、頻繁に浸かりに行ってリフレッシュしていますね。またコミュニケーションマナー講師の資格も取得しているのですが、「他者だけでなく自分自身とつながり、どんなときでも心地よい自分でいられる方法」をお伝えしています。その方法を取り入れて、あまりストレスを溜めずに日常生活の中でリフレッシュし、常に笑顔でいられるよう気をつけています。あとは寝る(笑)。何か嫌なことがあったら、もう寝ちゃいますね。

――仕事を楽しむためにも、自分なりのセルフケアを怠らないことが大事ですよね。ちなみに、これからチャレンジしたい仕事はありますか?

フリーランスの秘書でチームを組んで、業務提携を考えています。一人でできる業務には限りがあるので、企業から依頼が来たら私がディレクションして、メンバーに仕事を振って案件を効率的に回していけたらと。また、自分のノウハウをアウトプットして、クライアントの売り上げを創れる秘書を育てたいので、育成講座も開催したいと考えています。

――これから、酒井さんのような秘書が増えると、会社組織も変わっていきそうですね。

やはりいまはどこも人材不足なので、秘書業務を見直して業績につながる仕事をしてもらいたいというのが経営者の本音だと思います。新しく採用するにしても、社員だと社会保険や福利厚生にお金が掛かります。そうしたみなさんのお役に立てるのが、これからの時代のフリーランス秘書なのかな、と。ご要望にお応えするためには、私自身まだまだスキルやノウハウを高めていく必要がありますが、積極的に後身を育てていきたいです。

(取材・文:末吉陽子 編集:ノオト)

取材協力

酒井麻衣子さん

研修会社に勤務していた当時、「一冊の手帳が人生を豊かにする」という現実とその手法を学び、
社長の書籍を毎月200冊以上3ヶ月間連続で1000冊以上販売。これまで100人以上の経営者、個人事業主、営業マンなどにコンサルティングを行い、彼らの業績伸長に貢献してきた。その後、1人の秘書を複数の会社がシェアする仕組みを考案し、2014年に独立。現在は、経理、顧客フォロー、経営戦略会議への参加、プロジェクトのディレクション、スタッフ教育、直接売上を上げる業務など、その職域は多岐に渡る。

Facebook: https://www.facebook.com/sakai.maiko
Blog: https://maikosakai-official.hatenadiary.jp/

この記事の筆者

末吉陽子

編集者・ライター。1985年、千葉県生まれ。日本大学芸術学部卒。コラムやインタビュー記事の執筆を中心に活動。ジャンルは、社会問題から恋愛、住宅からガイドブックまで多岐にわたる。
▼公式サイト
http://yokosueyoshi.jimdo.com/

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