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2018/08/31 up

「考え方や行動の癖を知らなければ、片づかない 」 コンサルティング型の片づけ支援を行うライフオーガナイザー®とは

text by 末吉陽子

撮影=小野奈那子

常日頃から「家の中が片づかない」「部屋に物があふれてごちゃごちゃ」とお悩み人にとって、整理整頓は至難の業ではないでしょうか。その場しのぎで部屋をキレイにしても、いつの間にか元の状態に戻っているなんてことも。そんな根っからの“片づけられない人”を、思考レベルから変えてくれるのが、ライフオーガナイザーです。

ライフオーガナイザーは1980年代にアメリカで誕生した職業プロフェッショナル・オーガナイザーの日本版で、家事代行業とは異なり、コンサルティング型の片づけ支援をメインにしています。今回話を聞いたのは、昨年ライフオーガナイザーの資格を取得し、現在フリーランスとして活動している大村純子さん。

「依頼主の生き方や生活全般の見直しをサポートすることに、喜びを感じる」と話す大村さんに、ライフオーガナイザーを志した理由、これからの展望などについて語ってもらいました。

子育てに一生懸命だった頃、人生の目標を見失い心のバランスを崩す

――大村さんは、インテリア関係の仕事からキャリアをスタートしたとか。もともと住まいや暮らしに関心があったのでしょうか?

インテリアは物心ついた頃から好きで、学生時代はオーストラリアに留学して専門的に学びました。帰国後は、インテリア関連の企業に就職して、照明デザイナーに。やりがいを感じつつも、どこかで「何かしっくりこないな」と思っていたんです。

ちょうど5年ほど経った頃、インテリア関連の別の職種へ転職。戸建ての内装担当などをしていましたが転勤を打診され、それを契機に退職。DIYアドバイザーの資格を取ろうと思い、職業訓練校に通いました。

――やはり暮らしにまつわる仕事がしたいと思ったのですか?

はい。でも、学校に通っているときに長女を妊娠したので、結果的にDIYアドバイザーとして働くことはありませんでした。それからずっと専業主婦だったのですが、長女が小学生になり、次女が幼稚園に通っている頃、心のバランスを崩してしまったんです。

――何が原因だったのでしょうか?

子育てに追われる毎日で、自分が本当に望んでいることを見失ってしまったのだと思います。誰かのために生きることは、もちろん幸せなこと。ただ、自分がしたいことを後回しにし続けた結果、私自身が何をしたいのか分からない状態が続き、知らず知らずのうちに自分を追い込んでいたのかもしれません。

夫と話し合って、 自分を見つめ直す時間が必要だと感じ、留学時代の友人を訪ねて、オーストラリアとタイに2週間ほど滞在することに。それ以降、日常生活の中で自分の得意なことはなんだろうと探るようになったんです。自分に意識を向けるきっかけになりました。

――ライフオーガナイザーという職業を知ったのは、どんなタイミングでしたか?

2年ほど前、家族4人でキャンプに行ったとき、テントの中をせっせと片づけていると、夫から「そんなに無理しないで、ゆっくりしなよ」と言われました。そのときに「好きでやっているのに」と思った瞬間、「片づけ」こそが私のやりたいことだと、ピンときたんですよね。

振り返ってみると、どんなに子育てが忙しくても、家の中の整理整頓だけは欠かさなかったことに気づいて。そこから、この“好き”を仕事につなげられないかと検索し、たどり着いたのがライフオーガナイザーでした。

ライフオーガナイザーの「人とつながれるところ」に魅力を感じた

――「片づけ」というキーワードを踏まえると、他の片づけ・収納の資格や家事代行サービスなども当てはまりそうですが、検討しましたか?

あまり検討しませんでしたね。というのも、片づけはもちろん好きだし、強みになると思いましたが、同時に人とのつながりへの関心も高かったんです。照明デザイナー時代に、通信大学の講座で心理学を専攻したこともあって。

なので、ただ家の中をキレイに片づけるだけではなく、もっと人に深く入り込んだ仕事をしたいなと。ライフオーガナイザーは、モノより人を重視する職業なので、自分にとって一番しっくりくると直感しました。人生初の「これだ!」感があったんです。

――ライフオーガナイザーになるためには、どのようなステップを踏んだのでしょうか?

ライフオーガナイザーになるには、認定講座を受講、認定試験に合格し、日本ライフオーガナイザー協会の会員になる必要があります。まずは2級をクリアしたいと考え、ライフオーガナイザーの中でもメディアで活躍している鈴木尚子さんの2級認定講座を受講しました。

これは、ライフオーガナイズの基本的な概念を習得する内容で、1日の受講で試験も受けるタイプ。認定試験に合格すると、1級認定講座の受講資格を得ることができます。

ただ、プロとして活動するには、依頼主にサービスを提供する実践的かつ実用的なことを学ぶ1級認定講座を受講して、認定試験に合格する必要があります。1級の取得には、1カ月に1回の講義をトータル3カ月分受講し、最終課題を提出して合否が決まります。私の場合、ライフオーガナイザーになろうと決めてから半年ほどで、1級を取得しました。

――費用はいくら掛かりましたか?

2級の講座と認定試験、サブテキスト代でおよそ2万3,000円。1級には、合計9万5,000円程度掛かりました。そのほか、年間入会費などで1万5,000円が必要です。ライフオーガナイザーになるための費用は、トータルで13万3, 000円ほど掛かることになりますね。

報酬体系を時給から成果型へとシフトしていけたら

――現在、ライフオーガナイザーとして働きはじめて約1年とのことですが、仕事の依頼はどのようなルートで来ますか?

イオングループの企業が運営するライフオーガナイザー派遣サービスに登録しているので、そこ経由の発注が多いですね。あとは、先輩のアシスタントで現場に入ることも。わずかですが、ブログを見た方からの依頼もあります。

――具体的な仕事内容について教えてください。

まずは、片づけ前に依頼主の話を聞く時間を設け、何のために片づけるのか目標を設定します。目標は「部屋から物を減らしたい」「すっきりとした生活を送りたい」と漠然としたものもありますが、とにかく困っていることは何なのか、片づけを通して叶えたいことを整理していきます。

コンサルティング型のサービスなので、自分なりの片づけ方は脇に置いて、依頼主が苦手に感じていることをくみ取り、その人に合わせた収納の方法や場所を考えます。この仕事のゴールは、依頼主自身が片づけやすくなる仕組みを構築することですね。

――1回の現場あたり、どれくらい時間がかかりますか?

本当にそれぞれですね。話を聞いてコンサルティングするだけで数時間かかりますし、片づけに数日必要なことも。それに伴い、報酬体系を見直せないか検討しているところなんです。

――それはどういうことでしょうか?

いまは時給という考え方がスタンダードですが、そこにこだわらずに報酬体系を考えたほうがいいのではないかと思うことが多々あります。人によってゴールまでに掛かる時間も千差万別なので、目標達成までの料金を一括にしたほうが、依頼主にとってもメリットがあるんじゃないかなと。苦手なことが少しでも楽になるよう、まるごと任せていただくような仕組みが作れないか模索中です。

――ちなみに、現在仕事ではどのようなものを経費計上していますか?

主に、交通費と書籍やセミナーの費用ですね。人間と密接に関わる仕事なので、自己啓発系の書籍はよく目を通すようにしています。最近は、アメリカで有名な人間関係カウンセラーのゲーリー・チャップマンの書籍『愛を伝える5つの方法』を読みました。選ばれる仕事をするうえで、依頼主へのフィードバックにつながる勉強は欠かせません。

コンサルティングを経て目の当たりにする依頼主の晴れやかな顔が仕事のモチベーション

――アドバイスして終わりではなくて、依頼主としっかり向き合うことが必要なんですね。

そうですね。アドバイスでその場は納得しても、考え方の癖を変えることはできません。片づけにはご自分でも気がついていない考え方や行動の癖が大きく関わり、それを認識してもらうには問いかけ続けることが大事。片づけの何を難しく感じていて、どうしたら楽になるのか、根掘り葉掘り聞くことから始めて最終的には仕組みの提案まで行うので、時間がかかります。

――どんなときに、仕事の喜びを感じますか?

やはり依頼主であるお客さま自身が、片づけのどんなところに難しさを感じていたかを理解し、ご自身に最適な方法を知って「片づけられない不安がなくなった」とおっしゃってくださるのが、一番うれしいですね。

先日、夫婦共働きでアパートから戸建てに引っ越したタイミングで、きちんと家事の役割分担ができるような仕組みをつくりたいと、ご依頼がありました。依頼主のご家庭に伺ったところ、お子さんが中学校へ進学したタイミングも重なったために、奥さまが疲れ切っていたんです。

思わずかつての自分と重ねてしまったのですが、何度かのコンサルティングを経るうちに、モノを整えることが負担ではなく楽になったようでした。結果的に、自分自身にも目を向けられるようになり、生き生きしていく様子が見てとれたんです。片づいた部屋を見るよりも、人の内面の変化を目の当たりにできることが、仕事のやりがいですね。

――片づけは、人生をより豊かにするうえで、欠かせないものなんですね。

そうなんです。「片づけくらい自分で何とかできる」と思いながらも、なかなか手が付けられないでいる人は、おそらく物を探すのに手間取るなど時間のロスも多いはず。人生は長いですが、時間には限りがある。自らが本当にやりたいことに時間を掛けるためにも、プロの手を借りて思考の整理からテコ入れして、いち早く仕組みを確立したほうがいいと思います。

――ライフオーガナイザーは、これからますますニーズが高まる仕事だと思いますが、今後はどのようなキャリアを積みたいですか?

私はまだ新人で、この仕事を長く続けるためには、どうしていけばいいのか模索しています。10年先までのプランを書き出したところ、ライフオーガナイザーを軸にしながらも業種にこだわらず、「人の生活をよりよくすること」なら何でも挑戦したいと思いました。

ブログで発信することもその一環ですし、講師としても幅広い人にライフオーガナイザーの魅力を伝えたい。もしかしたら、他の有資格者の方と一緒に何かできるかもしれません。

(取材・文:末吉陽子 編集:ノオト)

 

 

取材協力

大村純子さん

神奈川県在住。34歳での出産から8年間、専業主婦として子育てに奮闘するも自分を見失い、自分と向き合う大切さを痛感する。その経験を機に自分と向き合う片づけをサポートするライフオーガナイザー®として活動中。

blog:私の選ぶ暮らし
http://watashinoerabukurashi.com/

この記事の筆者

末吉陽子

編集者・ライター。1985年、千葉県生まれ。日本大学芸術学部卒。コラムやインタビュー記事の執筆を中心に活動。ジャンルは、社会問題から恋愛、住宅からガイドブックまで多岐にわたる。
▼公式サイト
http://yokosueyoshi.jimdo.com/

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