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2018/03/16 up

【座談会】節税、老後資金、子育て費用……自営業夫婦の「お金問題」

text by 有馬ゆえ

組織に縛られず自由に仕事ができる――自営業にこんなイメージを持つ人も少なくないはず。しかし、会社員とは異なり、日々の税務や年に一度の確定申告を自らしなくてはならなかったり、健康保険や厚生年金、退職金といった福利厚生がなかったりと、“不自由”な面も少なくありません。

特に、ともに自営業の夫婦には、その“不自由”に頭を悩ませる人も少なくないでしょう。そこで今回は、立場の異なる3組の自営業夫婦にお集まりいただき、節税対策や老後の備えなど、それぞれの「お金の問題」についてお話しいただきました。

※3組のお名前はすべて仮名です。

林田知行さん(39歳)、千紗さん(38歳)

2009年に結婚。ともにライター・編集者を経て、2016年に制作会社を設立し、夫婦で経営している。5歳の娘と3歳の息子がいる。

里田誠一さん(43歳)、英子さん(39歳)

2015年に結婚。ともにフリーランスのライター・編集者だったが、2017年に英子さんが夫の青色事業専従者に。2歳の娘がいる。

田部加奈子さん(39歳)

夫婦ともにフリーランスのライター・編集者。2010年に結婚したあとも、それぞれ個人事業主として活動。5歳の娘と3歳の息子がいる。

自営業夫婦がしている節税対策って?

――初めに、それぞれの簡単なプロフィールとご経歴を教えてください。

林田さん

僕たちは、2016年に会社を設立して、僕が代表取締役、妻が取締役を務めています。

僕は編集プロダクションに所属した後、広告の制作会社に勤務し、2010年に個人事業主として独立。妻は、大学時代からフリーランスのライターとして編集プロダクションに所属していました。(知行さん)

里田さん

うちは、僕が個人事業主で、妻を青色事業専従者(従業員)にしています。

僕は出版社に10年勤務したのち、2007年に独立。妻は、編集プロダクションに5年勤務し、2012年に独立。ともに、編集者、ライターとして活動してきました。(誠一さん)

田部さん

私は編集プロダクションに4年所属したのちに2006年に独立して、12年間フリーランスのライター、編集者をしています。

2010年に、同じようなキャリアの夫と結婚しましたが、今もそれぞれ会計は別です。

――皆さん、会計や確定申告はどのようにしていらっしゃいますか?

林田さん

会計担当は僕なのですが2010年に独立したときからずっと青色で申告しています。

実は、会社員時代も妻の白色申告を手がけていたので、確定申告の知識はあったんです。国税庁の確定申告のページから始まり、弥生会計のソフトを使ってみたり、クラウドサービスを使ってみたり。(知行さん)

里田さん

我が家はクラウドサービスを使って会計管理をしているのですが、経費の打ち込みや確定申告の実務は私が担当しています。ただ、知識は夫のほうがあるので、相談や質問はかなり密にしています。(英子さん)

田部さん

うちは夫婦それぞれ別に白色で確定申告をしているので、会計管理も個々です。

一度、自治体の税理士さんの力を借りて青色申告に挑戦したことがあるのですが、仕組みがわからなさすぎて挫折し、翌年から白色に戻してしまいました……。

林田さん

ご夫婦で会社にすることは考えていないんですか?(千紗さん)

田部さん

一度、そういう話になったことがあるんですが、公私ともに接していると喧嘩が増えそうで……。

お二人のようにどちらかがお金の管理が好きだったり得意だったりするならともかく、どちらも苦手なんですよね。管理したり、取り立てたりする側になると面倒ですし。

里田さん

わかります。私も結婚前は相当なザルだったので……。林田さんはなぜ法人化されたんですか?(英子さん)

林田さん

きっかけはいくつかありますが、背中を押したのはある企業の仕事の話が入ってきたことでした。大きな会社は個人事業主だと直接契約がしづらいので、法人化しようか、と。

それまでは話には出ていても、日々の業務に追われて延び延びになっていたんですよね。(知行さん)

――ライター、編集者など、経費の少ない自営業は、特に税金まわりも気がかりではないでしょうか。節税はどの程度されていますか?

田部さん

私が節税を意識し出したのは、ここ数年です。認可保育園の保育料って、所得額に関係しますよね。それがきっかけでした。

備えもしつつ節税する目的で、国民年金の付加年金、個人型確定拠出年金(iDeCo)、小規模企業共済年金に入っています。

里田さん

フリーランスは退職金も厚生年金もないですしね。うちも備えつつ節税をするという目的で、2人で国民年金の付加年金、個人型確定拠出年金(iDeCo)、個人年金に入っています。

それ以外だと、妻を青色事業専従者にして給与を経費にするのと、ふるさと納税をしているぐらいですね。(誠一さん)

林田さん

僕が個人事業主だったときも、妻を青色事業専従者にしていた時期があります。ただ、生命保険などは上限があるし、節税のためにはこれといって何もしていなかったですね。(知行さん)

――付加年金は「社会保険料控除」、個人型確定拠出年金と小規模企業共済は「小規模企業共済等掛金控除」、個人年金は「生命保険料控除」に関係し、青色事業専従者に対する給与は経費計上が認められていますね。林田さんは、法人化してからはどんな節税対策をしていますか?

林田さん

賃貸で借りている自宅兼オフィスを社宅にして、家賃のうち一定額を経費計上しています。節税らしい節税はそれぐらいかな。

あとは、経費を適切に使うとか、黒字になったらボーナスを出すとか、普通に経営しているだけです。(知行さん)

もしものための資金、老後の備え、子育て費用……

――老後の備えなどは意識されていますか?

田部さん

老後というよりは病気やケガへの備えとして、最近、フリーランス協会の所得補償保険に入ったんです。これはフリーランスを対象に、病気やケガなどで就業不能になったときにお金が支払われる保険なのですが、個別で加入するより割安なんですね。

私はこれまで大きな病気をしたことがなかったので保険の必要性は感じてなかったのですが、実は最近、夫が1週間ほど入院することになって……。

林田さん

それは大変!(千紗さん)

田部さん

命に別条はなく心配はいらないのですが、共同体としての在り方を考え直すきっかけにはなりました。うちは各自、毎月同じ額を共通の口座に入れる以外は、それぞれ収入や仕事内容には関与し合いません。

でも、人生にどちらかが働けない事態も起こりうるという共通認識ができて、将来に備えようという意識は高くなりました。

里田さん

一方で、ある程度は預金をプールして、いざというときに引き出せるお金も確保しておかないといけませんよね。(英子さん)

田部さん

そうですよね。これからは子どもの学費がかかってくるので、学費と老後の資金はトレードオフだなと感じてもいます。どちらも備えるだけ備えたいけど、バランスを取るのは難しいですね。

――ご夫婦で会社を経営していると、法人の財布と個人の財布はまったく別々になります。それぞれにどのぐらい入れておくかというバランスが難しそうですが……。

林田さん

給料の上限を決めなければいけないのが、法人化したときの難しさですね。

個人事業主だったときみたいに、事業で使った分を差し引いたお金を自由に使う……ということはできなくなる。夫婦2人とも役員なので、給与(役員報酬)の額はそう簡単に変えられないんです。(知行さん)

田部さん

会社設立時に給与額などを決める際は、会社の将来だけでなく家庭の将来も考えなくてはならないんですね。

林田さん

そうなんですよ。設立時に、税理士さんに「毎月の給与は安く抑えておいて、その分を退職金に回したほうがいいですよ」とアドバイスされたんです。退職金だと、給与とするよりは税負担が軽くなるみたいで。

でも、うちは2人の子どもがいて生活のための現金も必要だし、社員がいるわけではない。だから、役員報酬の額はそれなりの額にしましたし、会社の預貯金はある程度の額を残せばいいかなと考えました。(知行さん)

里田さん

顧問税理士の方はいつから雇っているんですか?(英子さん)

林田さん

法人化するタイミングで探しました。法人の確定申告で必要な決算書などはさすがに素人では作れないので。

フリーランス時代も「税理士を雇えばバンバン経費を使えて節税になるよ」と言ってくる悪いフリーランスのおじさんもいたんですが(苦笑)、それちょっと違うかなって。(知行さん)

里田さん

確定申告ってわからないことが多いから、経費をたくさん乗せると支払う税金が少なくなるって思考になりがちですよね。

たとえば、不動産購入は節税にはなるけど、そもそも不動産って人生設計や収入の見通しに鑑みて買うもの。目先の節税だけを目的にしてしまうと、いらない出費をしてしまったり、急にお金が必要になったときににっちもさっちもいかなくなったりするわけで……。(誠一さん)

林田さん

稼いだら、適正に経費計上して、適正に税金を支払うのが通常ですよね。やるべきことをやっていなくて損していたら、しかるべき処理をすべきだけど、無理に節税を追求するのは……。(知行さん)

田部さん

特にフリーランスは、いつ働けなくなるかわからないというリスクがありますしね。

(取材・文:有馬ゆえ 編集:南澤悠佳/ノオト)

この記事の筆者

有馬ゆえ

ライター、編集者。1978年、東京都生まれ。2012年に独立し、メディアや広告のコンテンツ制作に携わる。話を聞いて、人や物事の魅力を伝えるのが好き。趣味は、各種コンテンツ消費と男女アイドルウォッチ、パフェハント。妻で母です。

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