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2017/11/10 up

合同会社のメリットは何? まちづくり会社ドラマチックの代表社員今村ひろゆきさんに聞く

text by 南澤悠佳/ノオト

今村さん

撮影=小野奈那子

会社と聞くと、多くの人が「株式会社」をイメージするのではないでしょうか。しかしいま、「合同会社」を設立する人が増えています。

総務省の「種類別 合同会社の登記の件数 (平成19年~28年)」によれば、2007年の合同会社設立件数は6,076件でしたが、2012年には初めて1万件を超え、2016年には2万3,787件と、右肩上がり。私たちが普段耳にする会社では、Apple JapanやAmazon Japan、西友、日本ケロッグが合同会社です。

合同会社は株式会社に比べてどんなメリットがあるのでしょうか? クリエイター向けアトリエ・オフィス・ショップの拠点開発・不動産再生事業などを手掛ける合同会社「ドラマチック」(通称まちづくり会社ドラマチック)代表社員の今村ひろゆきさんに、経営者ならではのリアルな話を聞いてみました。

合同会社は出資比率に関わらずに利益を分配できる

――今村さんは個人事業主を経て合同会社を設立しました。なぜ法人化しようと思ったのでしょうか?

手がける事業の規模が大きくなった、というのが大きな理由です。僕は個人事業主のときからずっと、その街にユニークな人材や活動が根付く仕組みづくりに取り組んでいます。

当初は、街中の利用されていない空間を貸し出す「MaGaRi(間借り)」といったサービスや、浅草のシェアスペース「LwP_asakusa(ループ浅草)」の運営を中心に行い、講演の依頼があれば、それを引き受けていました。規模が小さかったので、個人事業主の範疇でも問題なかったんです。

――その後、大きな案件が舞い込んできたとか?

はい、縁あって東京・中延にある駅前の400平米のビル1棟を共同アトリエとすることになりました。ビルの運営なので、これまでとは規模がまったく違います。しかも、個人事業主だと万が一事業に失敗して債務を負った場合、無限責任になってしまう。何かあったときに備え、有限責任である法人にしようと考えたのが、法人化のきっかけですね。それと、ビルのオーナーさんが法人だったので、個人よりも法人同士の方が安心だとも思いました。

会社設立に関する本を読み、有限責任の形態には「株式会社」と「合同会社」があり、両方を比較しました。実はそのとき、来週・再来週にはビルの契約というタイミングだったんです。合同会社なら株式会社に比べて手続きが少ないので短期間で会社をつくれるし、設立コストも株式会社の半分くらいの費用で済む。そういった理由で合同会社を選びました。

合同会社と株式会社

――ほかに、合同会社で良かったなと思うことはありますか?

合同会社の特徴の一つに、出資比率に関係なく利益分配できる点があります。

2015年、僕の会社が入居しているビルのオーナーである株式会社「メトロ設計」さんと一緒に、合同会社「点と線と面」を立ち上げたのですが、ここで出資比率によらない利益分配の恩恵を受けています。これは株式会社との大きな違いですね。

今村さん

――利益分配はどうされているのでしょうか?

具体的な比率はいえませんが、中延のシェアアトリエ「インストールの途中だビル」の経験則から算出しています。家賃の中から運営側はどれくらいの利益を得ないと継続できないかという金額や割合のメドがついているので、それをこのビルの運営にも導入してもらっています。

最低ラインの金額を設けつつ、収入に対して事前に決めた比率で利益を分配しています。この比率については、先方も「だいたいこれくらいだよね」と温度感が近かったので、利益分配を決めるのに大変だったことはないですね。

「点と線と面」で運営するシェアアトリエrebootのコワーキングスペース

――「点と線と面」では、誰が代表を務めていますか?

合同会社では、株式会社の「代表取締役」に当たる人は「代表社員」と呼ばれ、個人ではなく法人が代表社員になることもできます。実は今回の新会社では、「まちづくり会社ドラマチック」と「メトロ設計」の2社が代表社員です。

ただ、実際に業務を遂行する人として職務執行社員の選出が必要なので、僕と先方の代表の小林さんがその立場にいます。そのほか、2人の専任スタッフがいます。

合同会社の場合は出資者の平等な話し合いで物事を決めますが、最終的なゴーサインを出すのは小林さんか僕。議論になることはもちろんありますが、お互い根っこの目指している方向性が一緒なので、意思決定でもめることも特にないですね。

今村さん

“街づくり”の事業形態で収益を上げるには

――合同会社だと、株式会社のように広く資金を集めることができないですよね。それはデメリットにはなりませんか?

まちづくり会社ドラマチックでいえば、資金調達は信用金庫さんから融資を受けているので、その点でデメリットとは感じてはいません。僕が感じるデメリットといえば、名刺の肩書を見た人から「代表社員って何ですか?」と聞かれたときに、面白いエピソードが何もないことかな(苦笑)。

資金の話に戻ると、会社の事業が「人や活動が根付く街づくり」を目指しているので、短期的な儲けや配当を求める、投資家向けの株式発行など直接金融的な資金調達は合わないと思います。

たとえば、人気の街の駅前一等地に大きなタワーマンションを建てたら、すぐに人が集まって、お金も入ってきますよね。投資家から資金を得ることはできますが、それだと目指す街づくりの方向性が異なるケースも出てきてしまいます。

もちろん、収入源を確保することも大切です。最近では、自治体や企業からの施設の運営委託の案件などが増えてきたこともあり、以前に比べて収益が安定しつつあります。

パンフレット

――“街づくり”というと、収益を上げるのは難しそうなイメージもあります。

まちづくりの一環でイベントをよく行うのですが、多くの方がイメージするように、イベント単体で収益を上げるのは無理ですね。有名な歌手を呼んで興行収入を得つづけても、その街に人が根付くための街づくりとはかけ離れてしまいます。

どちらかというと、場所を運営する方が収益になりやすい。たとえば、「インストールの途中だビル」のようなシェアアトリエの運営、施設のレンタル事業、ホテルの経営などもこれに当てはまります。街中にある民間企業のビジネスモデルと、コミュニティ形成や地域の魅力を発信するイベントなど公共性の高い場づくりや活動を組み合わせるのがポイントです。

こうした街づくり活動の結果、街に住みたい人や施設のファンや口コミが増えて人が集まれば、経営も成立し、収益化にもつながります。

「まちづくり会社ドラマチック」が公共施設運営の一環で実施する交流型イベント「ならしのスタディーズ」

――実際に今村さんが手がけた案件で、街が自立し、盛り上がった事例はありますか?

僕だけの力ではありませんが、7年前に浅草に拠点を構えたとき、当時の台東区は文化やモノづくり系の人たちはあまり横のつながりがありませんでした。そこで、隅田川界隈の人材交流を目指したイベント「隅田川ジャンクション」や「台東スタディーズ」を定期的に開催し、街のキーマンや企業の経営者、クリエイターに声をかけていたんです。

そのとき「初めまして」とつながった人たちが、いまは東東京エリアで中心となって1.5~2万人が来場するイベント「革とモノづくりの祭典 浅草エーラウンド」を開催したり、東京都に採択され創業者を増やすプラットフォーム「イッサイガッサイ(EastSide, GoodSide)」など一緒に仕事をしたりしている。人と人をつなぐことで、街の盛り上がりに貢献できたかなと思います。

――それは素敵ですね!

街が自立する仕組みをつくり、その街が盛り上がるように活動する人たちを後押しし、その輪を広げていく。こういった動きはまずコミュニティづくりから始まりますが、交流会を1回しただけではつながりは生まれません。出会った人同士が安心して情報交換や交流できる場を継続的に設け、それぞれのやりたいことや得意を共有するのが大切なんです。

もちろん、これは時間がかかります。実際にいま携わっているプロジェクトはどれも長期スパンで、最低3年、なかには20年続くものもあるくらいですから。

今村さん

事業内容によっては、合同会社が適していることも

――最初は小さなスペースの運営から始まり、いまはエリアマネジメントもされています。将来、法人の形態が変わることはあるのでしょうか?

もし別の形態の可能性があるとしたら、NPO法人かもしれません。NPOは寄付を収益の構造に入れられます。たとえば、一人が月1,000円でもその街のために出資してくれれば、年間1万2,000円。それが500人~1000人集まれば心強いですよね。ファンが増えれば増えるほど事業が安定していくのは、街づくりの事業と相性が良さそうです。

――今後は、どのように事業を展開していく予定ですか?

これまでは台東区と品川区を拠点に活動していましたが、いまは千葉県習志野市でのまちづくり事業にも関わり、2018年には江戸川区と京都市での事業も控えています。これからも今後も、その地域に住む人の活動を後押しして、新しい仕事やつながりを生み出すことは変わりません。

今後はこれまで蓄えてきた知見を生かし、現地でのパートナーとチームを作り、全国に活動を広げていくことも視野に入れています。街づくりにはさまざまな人の協力が欠かせないので、資金調達面以外で考えても、法人が代表になれない株式会社は向いていないかもしれません。いろんな会社で組んで物事を進めるなら、合同会社の方が適しているといえそうです。

(取材・文:南澤悠佳/ノオト)

取材協力

今村さん

今村ひろゆきさん

まちづくり会社ドラマチック代表社員。「街にユニークな人材や活動が根づく仕組みづくり=まちづくり」とし、遊休ビル活用や公共施設運営、エリアマネジメント、にぎわいづくりを行う。おもなプロジェクトにシェアアトリエ「インストールの途中だビル」「reboot」、現代の公民館「SOOO dramatic!」、フューチャーセンター「ならしのスタディーズ」などがある。

▼まちづくり会社ドラマチック
http://www.drmt.info/

この記事の筆者

南澤悠佳/ノオト

有限会社ノオト所属の編集者、ライター。得意分野はマネー、経済。ママ向けや不動産、会計など、企業のオウンドメディアを中心に担当する。

Twitter ID:@haruharuka__

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