> マルナゲとは?

2017/09/01 up

仕事への葛藤が続いた会社員生活 独立はやりたいことに集中する手段

text by 南澤悠佳/ノオト

ゆうせいさん

撮影=栃久保誠

ネット上やドラマのワンシーン、広告などで、こちらの男性の顔を見たことのある人も多いのではないでしょうか。ゆうせいさんは、映画ライターをメインに、フリー素材「ぱくたそ」のモデルやチャンバラ合戦(※1)のMCと、多くのジャンルで活動しています。

そんなゆうせいさんが、個人事業主として独立したのが2017年7月。大学時代に上京し、卒業後はUターンして多種多様な職を経験。30代半ばで再上京してからはウェブ制作会社のLIGやBITA(以下、ビットエー)、TearsSwitch(以下、ティアーズスイッチ)と、会社に所属しながら働いてきました。なぜ今、独立を決めたのか。その理由を伺いました。

これでいいのかな……常に葛藤していた会社員時代

――ゆうせいさんは、肩書を豊富に持っていますよね。フリー素材モデル、ライターの仕事はイメージがつきやすいのですが、チャンバラ合戦のMCは何がきっかけで仕事になったのでしょうか?

きっかけは2015年の夏頃、当時はビットエーの社員で、前職のLIGで行われた人狼ゲーム(※2)に参加したときですね。そこで、チャンバラ合戦のイベントを企画運営する「ティアーズスイッチ」の人に誘われ、その年の冬に初めてチャンバラ合戦にスタッフとして参加してみました。そしたらこれがもう、面白くて。子どもと大人が一緒になって、スポンジの刀で斬り合うんですよ。それも大人の方が本気になるくらい。でも、刀がフニャフニャなので誰も怪我しない安全な遊び。これは最高だと思いました。

ティアーズスイッチの人と仲良くなったので一緒に食事に行くことになり、その席で自分の仕事の話をしたんですね。「ウェブメディアのディレクションや記事の執筆ができる」と。あと、「チャンバラ合戦に参加してみて、チャンバラがとても好きになりました」って。そうしたら、ティアーズスイッチはベンチャーで人手が不足していて、「チャンバラ合戦の司会(MC)ができて、メディアのディレクションができて、記事を書く人」を求めていたんです。「それ俺じゃん!」って(笑)。そこから「うちに来ませんか?」って誘われました。

ビットエーでは広報として、コーポレートブログを更新したり、他社の広報さんとのつながりをつくったりしていたのですが、仕事についてこのままでいいのか悩んでいたんです……。

それと同時に、僕は映画ライターとして活動もしていたのですが、映画の試写会は平日の昼間に行われることが多いんです。夕方なら少し早めに仕事をあがって観に行くのですが、映画の記事を週1本ペースで書いていたのもあり、回数が多くなると周囲に対して少し悪いな……という気持ちも出てきちゃうんですよね。ビットエーは副業OKでしたが、ティアーズスイッチの方がそうした活動に対してより柔軟な姿勢だったんです。

ゆうせいさん

――まさに渡りに船ですね。

正直、ビットエーの方が給料も待遇も良かったので、少し迷いました。でも、自分の持ち味を生かしきれていないという思いが抜けきらなくて。

それと、チャンバラ合戦の「外遊びを再び子ども達の文化に」いう考えに強く共感したんです。実際、イベント自体も面白いですし、それに携わりたいという思いが強くなったんです。そうして、2016年の秋に転職しました。

――あれ? となると、ティアーズスイッチの在籍期間は1年弱ですよね。やりたいことが実現できそうな会社に転職しても、仕事に対する悩みが続いた……?

そうなんです(苦笑)。

ティアーズスイッチでは、チャンバラ合戦の問い合わせをいただいたときに、どこで、何人で、どういう対戦方法で、というのを話し合います。僕の役割は、イベント当日にMCとしてイベントの進行を管理するほか、参加者がどうしたらケガなく楽しめるかをサポートする役割でした。さらにこれまでの職務経験から、ウェブサイトのディレクションも担当していました。

それはそれですごく楽しいのですが、入社当時は10名に満たない規模のベンチャーだったので、社員はなんでもやらないといけません。そこはわかってはいたんですけど、経費精算といったこまごまとしたものはもちろん、イベントのための物品の発送作業など、やることが膨大にありました。しかも僕は映画ライターとしても活動していたので、全部をやろうとすればするほど苦しくなってくる。どこかで割り切らないといけないのですが、やるからにはいろいろやりたくなってしまって。

そんなときに映画ライターの仕事も忙しくなってきました。自分のやりたいことに集中することを考えたとき、業務委託の選択肢がベストなんじゃないかということに気づいたんです。チャンバラ合戦のMCとウェブサイトのディレクション仕事をティアーズスイッチから業務委託で請けて、映画ライターとしても活動する。そうすれば、お世話になっている会社にも迷惑をかけることがないので、平和的解決になるかな、と。

ゆうせいさん

本当にやりたいことだけをやらないと、悩み続けることは変わらない

――そして、独立を決めたと。

実は、環境が変われば悩まないのかと思い、ほかの会社を1社だけ受けたんです。でも縁がなかった。その瞬間にわかったんです。僕は会社員に向いてないと。

僕はこれまで組織に所属していて、ずーっと仕事について悩んでいました。それは、自分のやりたいことがあるけど、会社にいる以上そうでないこともやらなくてはいけない葛藤から生まれるんです。たぶん本当にやりたいことだけやらないと、ずっと悩むなと思いました。転職活動で縁がなかったのが後押しとなって、「もう独立しよう!」と決めました。

――ご家族の反対はありませんでしたか?

妻は最初、反対していましたね。ただ、ビットエーのときから、「独立してみたらどうなるかなぁ」とは話していたんですよ。そこまで本気ではなかったのですが、ぼんやりと。

ビットエーからティアーズスイッチへ転職することは「悩んでいるし、いいんじゃない」って言われて、それで転職してもまだ悩んでいる。その姿を見て妻も「この人は独立しかないんじゃないか……?」と思い始めたみたいでした。おそらく、こんなに毎日仕事に悩んでいる人を見るくらいなら、一回好きにさせてみようと腹をくくったんだと思います。最終的には妻から「独立してみたら?」と言ってもらえて、今しかない! と思いましたね。

あと、妻は上場企業に勤めているので、いざとなれば「自分がいれば生活はできる」とも思ってくれたみたいです。

ゆうせいさん

ブログで状況を発信し、新たな仕事を得るチャンスをつかむ

――独立するにあたって、収入のアテはあったのでしょうか?

ティアーズスイッチの業務委託があるので、死なない程度の収入は確保できていました。とはいえ、それしかないので正直不安だらけで。映画ライターの仕事は記事単価がそこまで高くありませんから。ほかに、ブログやフリー素材モデルの仕事もあるので、それで少しずつ収入をかき集めようと思っていました。

ただ、ブログが転機になったのはあります。ブログで「独立しました」と書いたら、記事を執筆していた映画メディア「シネマズby松竹」の編集長から、副編集長をお願いできませんかと依頼があり、8月1日に就任しました。ほかにも、独立をきっかけにライティングのお話をいただけました。

結果的にお仕事をいただけたので良かったのですが、本来は独立前にある程度根回しをしてからフリーランスになった方がいいと思います。僕の場合は転職活動で落ちてもう独立だ! と見切り発車だったので、そういうことを一切していなくて(苦笑)。これまでの転職も人に誘われることが多く、人の縁に生かされていると感じますね。

――独立されて1カ月(取材当時)、今の収入の配分はどのような感じでしょうか?

全体を10とすると、業務委託が3、副編集長が3、映画ライターやブログ、モデルを合わせたものが4ですね。

勢いで独立したのもあり、当初は貯金を切り崩すことも想定していたのですが、意外とそこにはあまり手をつけずに済んでいます。

ただ、年収はガクンと下がると思います。というのも、昨年は副業がかなり順調だったこともあり、副業で200万円近くの収入を得ていました。ビットエーのお給料と合わせると、追加で所得税を支払ったくらいなんです。ただ、今年は独立するまでの半年で副業の収入は昨年の半分くらいですし、これからは副業だった仕事が本業。特に映画の仕事をより一層頑張るぞと、自分自身に発破をかける形になっています。お金の面はこうした状況ですが、今はストレスなく仕事ができている状況がうれしいですね。

ゆうせいさん

――今後は、どのように仕事をしていきたいと思っていますか?

今、俳優さんや監督さんにインタビューする機会が増えていて、その機会を増やしたいですね。特に大泉洋さんに会いたい(笑)。当面の目標は、「探偵はBARにいる3」の公開タイミング(※注:2017年12月1日公開)で大泉さんをインタビューすることです。

将来的には、本を出したいと考えています。電子書籍でもいいのですが、書籍は手がけたことがなくて、それも自費出版ではなく、出版社から出したい。これも映画と関連して、できれば映画エッセイを書き、その書籍化をめざしています。というのも、親がウェブの仕事ってなかなか理解してくれなくて(苦笑)。本になれば自分の仕事がわかりやすくなり、親孝行にもなりそうですから。

※1 チャンバラ合戦
スポンジ製の刀を持ち相手の腕についたボールを落としていく。場所や人数の枠にとらわれず、老若男女が楽しめるチームビルディングアクティビティ。

※2 人狼
参加者は全員とある村の村人として振る舞うが、そのうちの何人かは人狼と呼ばれる村人に化けた狼。人狼は夜になると村人を襲うが、誰が人狼なのかは見た目ではわからない。そのため、それぞれの発言などに基づいて誰が人狼かを推理していくゲーム。

(取材・文:南澤悠佳/ノオト)

取材協力

ゆうせいさん

映画ライターとして日経ウーマンオンライン、シネマズby松竹などで映画コラムを執筆し、2017年8月からはシネマズby松竹の副編集長に。ほか、「ぱくたそ」でフリー素材モデル、チャンバラのMCも。Twitter ID:@wm_yousay
▼個人ブログ「雰囲気で話す」
https://yousayblog.com/media/

この記事の筆者

南澤悠佳/ノオト

有限会社ノオトに所属していた編集者、ライター。得意分野はマネー、経済。

Twitter ID:@haruharuka__

ほかの記事を検索する

関連ワード