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2017/04/28 up

初期費用はゼロ円! 西本貴信さんが「おっさんレンタル」を副業で始めたワケ

text by 末吉陽子

西本さん

“イケてる”と勘違いしているおっさんを、1時間1,000円からレンタルできるサービス「おっさんレンタル」。サービス開始から5年で利用者が年々増加しています。

登録しているおっさんは、会社経営者から主夫まで、その経歴はバリエーション豊か。レンタルされたおっさんは悩み相談からストーカー対策、コミケの売り子まで、「お客さまが利益を得ること、幸せになる」範囲で、ありとあらゆる要望に対応してくれるそう。

そんな一風変わったサービスを立ち上げたのは、フリーランスのファッションスタイリストとしても活躍する西本貴信さん。そこで、本業の話から「おっさんレンタル」を始めた理由、気になる売り上げのことについて、ご本人を直撃しました。

大学卒業後渡米、いきなりフリーに! カード依存でお金を使いまくっていた

――西本さんの本業はファッションスタイリストだそうですね。まずは、本業でどのようなお仕事をされているのかお聞かせください。

古着が好きだったこともあって、大学卒業後22歳で渡米して8年ほどいたんかな。そのときからずっとフリーランスのファッションスタイリストをしてます。帰国後もブランドとか個人のスタイリングの仕事をしていて。ファッション以外にインテリアなどもトータルスタイリングします。

長いお付き合いのお客さまは16年くらいかな。起業家の方とか、リタイアしてお金に余裕のある方などが顧客で、一緒に買い物にいって洋服や家具を選ぶのが仕事です。

――日本の大学を卒業後、そもそもなぜ単身アメリカへ?

当時、アメリカに憧れてたし、脳内の9割以上は「好きなファッションの仕事でお金を稼ぎたい」だったからね。アメリカだと相場とかなくて、自分の交渉次第でギャラはいくらでも変わるんで、自分の頑張り次第でいくらでも稼げるんですよ。

――食べていけるのか、不安はなかったんですか?

普通に考えたら不安やろうね。どうやって生活するのって。契約切れたら終わりやから。ただ、自分で言うのもなんやけど、昔からお金に苦労したことないんですよね。若い頃はカード依存症みたいになって、ばんばん欲しいものを買いまくってたね。今はもうそういうお金の使い方は卒業したけど。調子いいときの年収は、パイロットくらいあったんちゃうかな。僕、人たらしですねん(笑)。

おっさんレンタルを始めた理由

「おっさんレンタル」は人の内面を変える手助けをしたかったから

――人たらし!? 具体的にどのようなところがでしょうか?

目上の方って、若い人を応援したいっていう気持ちがあるでしょ。僕は甘え上手言うんかな。そこにうまく乗っかるから、懐に入れてもらえるのかもしれないね。あと、悲しいかな人間って、八方美人だから全員から好かれたいんですよ。

でも、それ無理なんですよ。だから、わかる人はわかるって思って、僕は何でも正直に言うようにしてる。「その服似合わないですよ」とか「髪型、“ほうき”みたいになってますよ」とか。そういうところをいいって思ってくれる人が声かけてくれるんちゃうかな。

――なるほど。ちなみに、営業活動はされていたんですか?

営業したら仕事は来ないよ。期待したらダメなんですよ。「大きい仕事をやりたいな」と思うと、余計な気合が入るやろ? で、ダメになってしまう。「大きな仕事」ばっかり見ていちゃダメなんですよ。ちっぽけな仕事をコツコツやり続けているとチャンスが巡ってくる。そこが大事だと思いますよ。おいしい仕事は続かないですよ。絶対終わりがあるからね。

――本業で成功されているのに、なぜ「おっさんレンタル」をはじめようと思われたのですか?

スタイリストはお客さまの外見を変えて、より魅力的に見せるのが仕事。これは簡単にできるんですよ。美容院に行ってヘアスタイルを変えて、メイクして、おしゃれな服を着る。すると驚くほど人は変わる。ところが人間の内面って意外と変わらないんですよ。外見を明るくしても、心は寂しい、暗いみたいな。そこをなんかちょっと応援したくなったんですね。

西本さん

「寂しいおっさん」×「話を聞いてもらいたい若い人」の組み合わせがいい

――そういう意味では、「おっさんレンタル」は、誰かに必要とされたい“おっさん”、誰かを必要としている“利用者”ともにハッピーになれるサービスですよね。

おっさんと若い人の架け橋になるコミュニケーションツールを作りたかったんですよね。居場所がなくて寂しいおっさんと、悩みを聞いてもらいたい若い人が時間を共有することで、双方ともに新しい発見とか、成長が期待できるんじゃないかなと。人間くさくてダサいサービスなんですけど、不思議と愛しいんです。

そういえばこの前、60歳くらいのおっさんが面接に来てね、「家に居場所がない」って言うんですよ。リビングで横になっていたら、「ルンバで髪の毛を吸われた」って(笑)。奥さんから邪魔者扱いされて、家でゆっくりくつろげないんですよ。あと、別のおっさんは 先にお風呂入ったら、「汚い」って怒られて、全部お湯を抜かれたらしいですよ。

ほかにも、定年退職した65歳くらいのおっさんが、会社にいた頃は年賀状が600枚くらい来てたけど、今年は3枚だったそうなんですね。権力の消失とともに年賀状も来なくなってしまった。人生ってこんなもんやなって、寂しいんですよね。だから週1回でもレンタルされると楽しいですもんね。指名で呼ばれるとおっさんは喜ぶんですよ。自分が求められている感じがして。

――なんだか切なくもコミカルで、“愛しい”の意味がちょっと分かる気がします。利用者の方は、おっさんにどんなことを期待しているのでしょうか?

ほとんどが女性で、かつ7割以上はリピーターなんですけど、皆さん悩み相談が多いですよね。とくに東京の人って、人の話を聞いてくれないし、友達同士でも意外と言わないですよね。言えないんですかね? 話を聞いていると、皆さん感極まって泣きだすことも多いですよ。やっぱり話を聞いてもらいたいんじゃないかな。

おっさん採用の決め手は“立ち姿が面白いかどうか”&“下心がないこと”

――おっさんレンタルの面接のときには、どんなところを見ているのでしょう?

“立ち姿が面白いかどうか”が大事な決め手ですね。イケメンはいないです。イケメンを並べたら、サイトの写真も様になるんですけど、面白くないんですよね。おっさんたちって、自分がイケてると思って写真を送ってくるんですが、そのダサい感じが面白いんですよ。で、会ってみて、立ち姿が面白ければ合格。

あとはトラップをかける。どんなのかは秘密だけど、下心のある人は採用しません。利用者の7割は女性なので、チャンスがいっぱいあるんですよ。落ち込んでいる女性もいますから。

笑う西本さん

「おっさんレンタル」は副業というより趣味、1時間1,000円は変えない

――サイトの立ち上げや運営に掛かる初期費用はどれくらい掛かったのでしょうか?

無料でネットショップを開業できる「BASE」を使ってるんで、立ち上げの費用は掛かってないです。あとは、“身ひとつ”やからね、運営に必要な経費はこれといってありません。

――「おっさんレンタル」は1時間1,000円と明朗会計ですが、主催者である西本さんはどうやって収益を得ているのでしょうか?

最初におっさんから加盟料をもらいますが、売り上げのマージンは受け取っていません。僕も出品してますんで、レンタルされたときは1時間1,000円単位の収入になってますけど。

あと、「おっさんレンタル」関係で講演会とかあれば、その分はプラスにはなりますね。このサービスを始めて5年目になりますが、僕にとっては副業というよりボランティア……いや、趣味ですね。おっさんレンタルの仕事がなくなっちゃって、本業だけだとつまらないですから。

――どのおっさんも、一律1時間1,000円ですが、ランク付けして金額を変えようと思われたことはないんですか?

それはしないですね。値段を変えたら面白くないし、ビジネスっぽくなるからね。あと格付けしてもいいんですけど、おっさんがいじける(笑)。完全に無料にしたら出会い系になりますから、ギリギリのラインで1,000円、と。

――では、最後に今後の展開について教えてください。

「おっさんユニバーシティ」を作って、おっさん予備軍の若い男の子に色々教えたいね。皆して「おっさんのスタジャン」とか着てたら笑うでしょ。あと、「おっさん T ポイントカード」とか面白いですよ。レンタルするとポイントが貯まるなんて。

あと、目下“おっさん臭”が消えるネクタイを作ってるんですよ。臭いの吸収とか乾きが早いから、ネクタイにするといいんですよ。色は赤にして、名前は“トランプ”。どうこれ、面白くない? まぁこんな感じで遊び心が大事。アホらしいことを本気でやるかどうかですよね。

(末吉陽子+ノオト)

取材協力

西本貴信さん

1967年生まれ。大阪府生まれ。 22歳で渡米し、映画、ドラマのスタイリストとして活動開始。 帰国後、ファッションプロデューサーとしてブランドディレクション等に携わる。 百貨店スタイリスト、養成塾運営のほかに、大手スタイリスト事務所のエグゼクティブプロデューサーを歴任。大学、専門学校で講師としても活動中。2012年より1時間1000円で何でも依頼を受ける「おっさんレンタル」を副業として開始。 現在も、さまざまな依頼人に“レンタル”されている。

▼おっさんレンタル
http://ossanrental.thebase.in/

この記事の筆者

末吉陽子

編集者・ライター。1985年、千葉県生まれ。日本大学芸術学部卒。コラムやインタビュー記事の執筆を中心に活動。ジャンルは、社会問題から恋愛、住宅からガイドブックまで多岐にわたる。
▼公式サイト
http://yokosueyoshi.jimdo.com/

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