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2016/10/21 up

「制度融資」を利用するメリットは? 創業25年の中華料理店に聞いた

text by 斎藤充博

異味香の店主山田さん

「制度融資」をご存じでしょうか? これは、県や市などの自治体が、個人事業や中小企業を支援するために行っている公的な貸付制度のこと。通常の金融機関で借り入れをするよりも、良い条件で資金の調達を受けられるのが特徴です。

今回は埼玉県川口市で中華料理店「異味香(イウィシャン)」を経営している山田慶忠さんに、制度融資を利用したからこそ分かるメリット・デメリットを聞いてみました。異味香は創業25年、雑誌の掲載やテレビの取材も多数行われている人気店です。

融資が必要になるタイミングは

――そもそも、個人経営の飲食業で融資が必要になるタイミングがあるのでしょうか? 資金が必要なのは開業時だけで、そこを乗り越えたら大きな出費はなさそうなイメージがあります。

お店を長く続けていると、どうしても壁が汚れてきたり、椅子が壊れてきたりします。そこで、お店を改装することになりました。

必要になったのは、内装工事の資金。それから工事中はお店を開けられないので、その運転資金ですね。金額にして数百万円ほどです。

――改装のタイミングで制度融資を利用されたのですね。

そうですね。うちは地元の信用金庫さんと長い間付き合いがあります。資金の相談をしたときに、信金の営業さんが川口市の「小規模事業者資金融資制度」を紹介してくれたんです。その制度は、市が直接融資を行うのではなく、市が指定した金融機関が低利で融資をしてくれる仕組み。なので、信金さんから紹介をしてくれます。

また、審査には信用保証協会の保証を受ける必要があります。信用保証協会の保証があると、万一のことがあったときに、貸す方も安心ですからね。信金さんとの相談の中で「まずその制度を使ってみては?」ということになりました。

異味香の外観

制度融資は使った方が良い

――制度融資を利用するメリットを教えてください。

金融機関に借りるよりもかなり安いです(2016年8月現在、川口市の小規模事業者資金融資制度は固定金利0.8%)。

また、さきほど言ったように信用協会の保証がつくので、連帯保証人が必要ありません。このご時世、連帯保証人になってくれる人を探すのはとても大変ですからね。これはありがたかったです。私のケースだと担保も必要ありませんでした。

ほかにも、貸付期間を長く設定できたり(2016年8月現在、川口市の小規模事業者資金融資制度の期間は、運転資金が10年以内、設備資金は12年以内)、1年以内の返済据え置き期間を設定できたりもします。

ただし、細かい条件はたくさんあります。市内で事業を行って1年以上継続しているとか、購入した設備は市内に設置をしなければいけないとか。

借り入れのタイミングで条件を満たしているのなら、絶対に使った方が良いですね。

レジを見せる山田さん

――逆に制度融資を利用したことで大変なことはありますか?

面倒なのは審査の書類です。事業計画書や、工事業者からの見積書などきちんとそろえなくてはいけません。もちろん普通の金融機関から借入れるときも必要になるものですが、ちょっとした間違いや形式の違いでも、書類の再作成になってしまいます。

既に付き合いのある信金さんの審査なら、ある程度口頭の説明で納得してくれることも多いのですが、制度融資はそうはいきません。そこが面倒でやらないって人もいますね。

――取引のある信金さんからの紹介ということでしたが、良い融資条件の話は同業者間で情報共有したりするものなのでしょうか?

もちろん同業者とも話しますし、商工会議所の仲間と情報交換することも多いです。制度融資の場合は、商工会議所の会報や川口市の市報にも載っています。

ただ、やっぱり取引のある信金さんから話が来るのが一番スムーズです。たとえば、途中で制度融資が使えなくなったときに、そのまま信金さんからの直接の融資に切り替えることができますから。

異味香の店主山田さん

金融機関の「いいお得意さん」になろう

――金融機関との付き合い方で気をつけていることってありますか?

信用を得るために重要なのは継続性なんですね。たとえば、定期預金を少額でも良いから毎月入れておきます。5年も続ければ、信金さんからは「5年間の付き合いのあるお客さん」ということになり、担当者との意思疎通がしやすい。

資金に余裕があるときでも、少額を借り入れて継続的に関係を続けていくのも良いと思います。金融機関から見て「いいお得意さん」になろう、くらいの心がけが必要です。

取引が全くゼロの状態で急に融資の相談だけに行っても、金融機関からすると何の情報もない人間です。なかなか相手にしにくいと思うんですよ。

まあ……基本的に借りたくはないというのが本音ではありますが(笑)。

――経営をしてゆく中で、飲食業独特の大変さってあるんでしょうか。

基本的に毎日お金が入ってくる業種なので、支払いで困ることって通常はないです。 でもその分、当てにしているお客さんの入りが少ないと、冷や汗が出てきますね。

うちは25年、店を続けていますが、その間ずっと安泰かというと、そんなことはありません。忙しいときと暇なときの差がどうしても激しい。これは飲食業の宿命だと思います。やっぱり日頃から資金調達のことは意識しておくべきだと思いますよ。

(斎藤充博+ノオト)

取材協力

山田慶忠さん

山田慶忠さん

JR京浜東北線西川口駅の駅前で中華料理店「異味香(イウィシャン)」を経営。地元からの支持だけでなく、芸能界のファンも多い。テレビ出演、雑誌の取材多数。

この記事の筆者

斎藤充博

斎藤充博

1982年栃木県生まれ。元大手ノンバンクの営業職。ライターとして体験取材記事を中心に多数制作している。
Twitter ID:@3216

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