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2016/09/16 up

わずか5坪の「食堂とだか」が1年経たずに要予約の人気店に、そして増床に至ったワケ【後編】

text by 南澤悠佳/ノオト

メモを取る戸高さん

撮影=藤原葉子

オープンから約半年で予約必須の店となり、1年弱で2号店をオープンした「食堂とだか」。しかし、当初はまったくお客さんが来なかったという。その状態から、どのようにして人気店へと駆け上がったのか。店主の戸高雄平さんに話を伺った。前編はコチラ

広告費は出せない、それならフォトジェニックな料理で勝負

――オープンしても人が来ない状況に対してどんな対策を?

正直、この飲食街の建物が中に入りづらいっていうのもあるんだけど、それは仕方ないしね。でも、広告費にお金はかけられないからさ。とりあえず店の存在を知ってもらおうと目黒川の橋のところに看板を出すことにして。あとは足を運んでくれたお客さんには感謝の気持ちで、とにかく一生懸命接客したんだよね。今思えば、すごく必死だった。

橋に看板を出した後、地域のメディアニュースの「品川経済新聞」に取り上げられて。その後、2016年の2月にブロガーのコグレさんにネタフルで紹介してもらったの。そしたら記事を見たお客さんが足を運んでくれて、それからすごく人が来るようになった。本当にありがたい話だよね。

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――飲食店がウェブサイトに取り上げられるのはよくある話ですが、光るものがないと話題になるのは難しい気もします。

料理の研究をしてたときに、フォトジェニックなメニューを出して、それをみんなが撮影して投稿してくれたらとは考えてた。たとえば、「ウニ・オン・ザ・煮卵」や「牛ご飯」はいろんな人が撮影してそれをウェブ上に載せてくれて、それを見た人が食べに来てくれて、気に入ったらまた友だちを連れて来てくれる。結果、フォトジェニックな料理が広告の役割を果たしているんだよね。

あとはお酒もオリジナルにこだわって、普通のハイボールもあるんだけど、「とだかハイボール」と銘打って、レモンのすりおろしをたっぷり入れたメニューも用意してるの。これはレモン5~7個を一気に使うから、結構原価がかかるんだよね。

――料理の原価は一般的に30%といわれます。でも、名物の「ウニ・オン・ザ・煮卵」はそれに該当するとは思えないですね……。

そう、「ウニ・オン・ザ・煮卵」や「牛ご飯」のようなフォトジェニックな料理は、正直原価率を考えてない。お店をやるなら、「これを食べに行きたい」っていうメインの料理が絶対ないといけないと思っていて、それは原価率を考えずに出したいものを出すようにしてる。その分、ほかのメニューは比較的原価率の低い野菜を中心とした一品を考えたりして、原価をかけるメニューとそうでないメニューで全体のバランスを取ってるの。お酒も同じ考えだね。

戸高雄平さん

売り上げがアップ! しかし、断るお客さんも増えてくる

――軌道に乗り始め、売り上げにはどのような変化が?

本当にありがたいことに、最初のときに比べれば、売り上げは2倍近くに上がったの。ただ、そうなると店が回らなくなってきて……。さらに、せっかく来てくれたのに満席でお断りするお客さんが増えてきたんだよね。1日に10人くらいは断ることになってしまって、これはいけないと。

――ということは、2号店を考え始めたのはそのくらい?

具体的に思い始めたのは、2016年4月くらいかな。もし2号店を出した場合、1日に10人断っているし……と考えたら、欲が出ちゃって(笑)。いけないんだけど、欲が出ちゃうよね~。

本当は20席くらいある物件があれば、そういうところにしたかったんだけど、五反田で駅から近い物件を考えると、家賃面がね……。そしたら、たまたま店の前の店舗が閉まるってなって、「どうしようかな」と思ってたら、フレンチの店が入るのがもう決まってたんだよね。「あー、そうなのか」ってちょっと残念に思ったけど、このビルにほかの料理屋さんができればにぎやかになるから、それはそれでいいなって思ったの。そしたら、そのフレンチの人が出店を辞めたらしくて、それならウチがってすぐ手を上げた。ここしかないタイミングというか、巡り合わせもあるよね。

――スタッフを新たに雇うことも、そのときに考え始めましたか?

スタッフを入れ始めたのは5月だね。単純に売り上げが2倍になって、人件費をまかなえるから。お店が回らずに機会損失になるよりは、人件費に投資してお店を運営できた方が、トータルの売り上げとしては良くなったと思う。

今は、1号店と2号店あわせて7人のアルバイトさんがいる。スタッフは五反田や大崎で昼仕事してる人ばっかりだから、週に何回も働けるわけではなく、仕事終わりにちょっとバイトして帰るって感じだね。でも、みんな元お客さんだから、店を好きで働いてくれてるのが一番いいよね。やっぱり、お店に来たことない人より、好きで来てくれる人の方が、気持ちをこめて働いてくれると思う。

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2号店ならではのメニューで、個性を出す

――2号店もご自身で内装をされてますよね。

そうなの。2号店は1号店よりも安く済んで、トータルで150~160万円。向こうも冷蔵庫などの大型設備はあったから、大きな買い物はなかったかな。物件取得費があったけど、それ以外は内装費が15~16万円で、グラスやお皿、備品を買い足したくらい。

――2号店を出す際にも、個性を意識されましたか?

もちろん! 2号店は1号店よりも日本酒に力を入れていて、果物をすりおろした「生ぶどうサワー」と「生りんごサワー」を用意して、2号店にしかないドリンクを用意してる。1号店とまったく同じだと、お客さんもつまらなく感じるだろうしね。

でも、増床したからといって、来てくれるお客さんが全員2号店を歓迎しているかというと、そうでもないんだよね。やっぱり、1号店で座って食事をしたいって人もいるし、難色を示した人もいるし……。シンプルに「あの料理が食べたい」「お酒が飲みたい」っていう人は2号店も利用してくれるけど、まだまだ課題は多いね。

戸高雄平さん

原価率にとらわれず、自分の目指す店を

――最後に、これから飲食店を開こうと思っている人へのアドバイスと、今後の抱負をお願いします。

俺自身の経験だけど、店を持つにはやっぱり秀でている“何か”の必要性はすごく感じる。すでに話したけど、料理の原価率ばかり意識する必要はなくて。家賃と人件費を抑えられれば、どんどん料理で勝負できると思う。東京は家賃が高いから単価がかかるけど、地方なら家賃は安いし、食材も安く手に入るんだから、いいものを出していったほうがいいよね。飲食店はお客さんの心にいい意味で何かが引っかからないといけないし、何がその人の心をとらえるかは人それぞれ。自分なりの武器を複数持つことが、重要になってくるんだと思う。

自分の店でいうと、このビルを俺の店で埋め尽くしたい(笑)。……というのは冗談で、長く愛される店にはしていきたいよね。もしかしたら今後、もっと広い場所へ移転するかもしれない。そのときは、融資を受けた大きなチャレンジになるのかな。

(南澤悠佳/ノオト)

取材協力

戸高さんプロフィール写真

戸高雄平さん

1984年生まれ。「食堂とだか」「立ち呑みとだか」の店主。地元鹿児島の居酒屋チェーン、東京の和食店を経て独立。
▼食堂とだか
https://www.facebook.com/wasse.umaka/?fref=ts

この記事の筆者

nanzawa

南澤悠佳/ノオト

有限会社ノオト所属の編集者、ライター。得意分野はマネー、経済。ママ向けや不動産、会計など、企業のオウンドメディアを中心に担当する。

Twitter ID:@haruharuka__

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