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2016/08/12 up

【実録トラブル】PC修理中に自然故障、弁償を求められたら?

text by 末吉陽子

PCの前で作業をする男性

フリーランスや個人事業主として働く上でのリスクの1つが、顧客とのトラブル。会社という組織の後ろ盾がない以上、何かあったときの責任は全部自分が負わなくてはなりません。

弁償を求められたり費用の支払いを拒否されたりと、金銭的なトラブルが起きないかも心配の種の1つです。そこで、個人でパソコン修理業を営む人の事例を紹介。民事事件から刑事事件までマルチに活躍する、畠山慎市弁護士に解決策を教えてもらいます。

修理中の自然故障も弁償をしないといけないの?

個人事業主としてパソコン修理を専門にするKさん。ハードのメンテナンスやソフトの復旧など、「パソコン周りの修理は何でもお任せ」と看板を掲げており、その技術力には定評があります。そんなKさんが過去に巻き込まれたのが、自然故障の弁償を求められるというトラブルでした。

「電源が落ちやすくなったということで、パソコンをお預かりして修理したときのことです。パソコンの電子基板を直すことで復活したのですが、引き渡しのときに『パソコンの中にあったはずのデータがなくなっている』と言われました。もちろん、契約書には『修理中の自然故障は保証しかねます』と記載しているものの、『データが紛失するなんて聞いていない』の一点張り……。今回の修理の場合、データがなくなることはないので、丁寧に説明したところ納得してもらえたものの、本気で弁償を求められたら受け入れるべきなのでしょうか?」(Kさん)

大きなトラブルに発展しなかったものの、パソコン機器に詳しくない顧客の中には個人情報を適切に処理しないままパソコンを修理に出す人もいるため、「今後も同じことが起きかねないと不安です」とKさん。

パソコンという精密機器を扱うがゆえの懸念。さて、畠山弁護士の見解とは?

重要なのは、自然故障の可能性を伝え、確認した証拠を残しておくこと

「トラブルを避けるために重要なのは、修理を請け負う時点で、データが消失してしまう可能性があることをきちんと説明し、了解を得ておくことです。修理するにあたって、データが消失してしまう可能性がある場合には、そのようなケースがありうること、そのような事態となってしまっても責任を負うことはできないことについて契約書や確認書に明記し、サインをもらっておくべきです。事前にそのような措置を講じておきましょう」(畠山弁護士 以下同)

では、もし修理した側に責任があるということになったら?

「修理する側に責任があるのであれば、損害賠償をしなければなりません。賠償額については、たとえば、紙ベースの記録が残っていて入力し直すことで復旧が可能な場合には、そのデータの入力に必要な人件費相当額が損害であるとされたケースがあります。また、ソフトが消失したのであれば、購入費用やインストールにかかる費用が賠償額とされることになるかと思います。復旧が不可能なデータが消失してしまった場合には、そのデータの価値を金銭評価した金額が損害額になると考えられますので、消失してしまったデータの価値次第で、賠償しなければならない金額は変わってきます」

Kさんの場合、事前の措置を取っていたようですが、契約書や確認書の内容が不十分だと、損害賠償を求められたり、揉めごとに巻き込まれたりする可能性は高くなります。契約書や確認書には「バックアップを取りましたか?」といった項目を作ってチェックを入れてもらうようにすることが望ましいといえます。

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説明の適切さも損害額の分担の判断材料に

また、修理業者に責任がある場合でも、その全てを修理業者が負担をするのではなく、一部については、依頼者が負担すべきとされるケースもあるのだとか。

「修理業者に責任がある場合、修理業者がその損害の全額を賠償するというのが原則です。ただ、たとえば、消失してしまったデータが重要なデータであるほど、依頼者は、『バックアップを取っておくべきだった』ということになりますが、そのような場合、バックアップを取っておかなかった依頼者にも一定の責任があるとして、賠償すべき金額が減額されるということがあります」

依頼者にも責任があるとされる場合、どの程度の負担をすることになるのでしょうか?

「負担の割合について、明確な基準があるわけではありません。裁判になった場合には、社会通念や公平の観点から、負担割合が判断されることになります。たとえば、専門部署を有する大手企業が依頼者の場合、より一層データのバックアップを取っておくべきだったという判断になると思います。また、依頼者がパソコンやデジタル機器に詳しくない個人であるという場合には、修理業者のほうが機器について詳しいことから、説明や確認を十分にしたかという点がポイントになってくるものと思います」

デジタル機器の修理はデリケートさゆえに、契約もとりわけ慎重に行いたいところ。そのうえで、依頼主としっかりとコミュニケーションを取って、修理のリスクについて納得してもらえるまで説明するのが、金銭トラブルを防ぐには大切といえそうです。

(末吉陽子+ノオト)

取材協力

畠山慎市さん

畠山・黒川法律事務所パートナー弁護士。民事、家事、刑事など幅広い分野の事件を扱う。駒澤大学大学院法曹養成研究科非常勤講師。東京弁護士会所属。「ガイドブック民事保全の実務」などの著書がある。
▼事務所ウェブサイト
http://hklo.jp/

この記事の筆者

末吉陽子

編集者・ライター。1985年、千葉県生まれ。日本大学芸術学部卒。コラムやインタビュー記事の執筆を中心に活動。ジャンルは、社会問題から恋愛、住宅からガイドブックまで多岐にわたる。
▼公式サイト
http://yokosueyoshi.jimdo.com/

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