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2016/08/05 up

クラウドワークで未経験職種に挑戦! 高収入を実現できたワケ

text by 末吉陽子

PCに向かうクラウドワーカーのママ

企業が不特定多数のワーカーに、ネットを介して仕事を発注する“クラウドソーシング”。場所や時間が固定されないことから、フリーランスや主婦、リタイアした人たちの新たな仕事の創出につながるとあって、ここ数年ほどで関心が高まっています。

中には、クラウドワーカーとして新しいキャリアをスタートさせる人もいるようです。現在、カメラマンの夫と子ども2人、4人家族の家計をメインで支えている森脇碌(ろく)さんもその1人。日本最大級のクラウドソーシングサービス「クラウドワークス」に登録している森脇さんは、まったくの未経験から2年前にクラウドワーカーとしてデザイナーデビュー。なぜ、クラウドワークを選んだのか、そのワケと今後のキャリアについて聞きました。

息子の病気発覚が“働き方改革”のきっかけに

――クラウドワーカーとして働かれる前は、どのようなお仕事をされていたのですか?

新卒で百貨店のインテリア部門に就職したのですが、建築寄りの仕事をしたいと思い、建築関係のコンサルティング会社に転職しました。その後、29歳のときに古い一戸建てや古民家、マンションなどをデザインしてリフォームする会社を立ち上げました。小さい会社だったので、お客さまの対応から費用の見積り、プレゼン、デザイン、現場管理などすべてこなしていました。ときには現場に入って職人として働くことも。現場での泊まり込みもあってすごくハードでした。朝早くから夜遅くまで働いていましたが、「この仕事は天職だ!」と思っていたので辞めようとは思ってなかったんです。

――順調にキャリアを重ねていらっしゃったのに、なぜクラウドワーカーに転身されることになったのでしょう?

長男の病気が発覚したことがきっかけでした。突然、医師から「将来車椅子の生活になるかもしれない」と言われたんです。そのときに初めて、自分の働き方を考え直しました。気持ちを切り替えないと、仕事も子育てもどちらもダメになるなと。いろいろ考えた結果、やっぱり子どもに勝るものはないと、会社を辞めることにしたんです。

辞めてから3カ月くらいは何もしないで、2人の子どもたちと遊びながらダラダラと過ごしていました。でも、貯金はどんどん目減りしますし、夫はというとアーティストとして活動しているので収入が安定しません。ならば私が働くしかないと一念発起して、将来長男を家で介護しながら働ける在宅ワークができないか考えるようになりました。そんなときに、「クラウドワークス」の存在を知り、未経験ですがデザイナーとして登録することにしました。

――これまでのキャリアと異なる、デザイナーを選ばれたのはなぜでしょうか?

最初はデザイナーになる気もなくて、正直どんな仕事でも良かったんです。たまたま「Illustrator」が多少使えたのと、これまで携わっていた建築の仕事にも若干通じる部分があるなと感じたので、チャレンジしてみようと思いました。夫も自分がクリエイティブ業界にいた経験を生かして、アドバイスをしてくれましたし背中も押してくれました。

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コンペに挑戦し続けた1年間

――デザインは目に見える実績が大事になってきますよね。すぐに安定的な収入を得られる保証はなかったのでは?

そうなんです。なので、とにかく実績を作らなければと思い、まずは「ロゴコンペ」に応募し続けることにしました。応募した作品が採用されたら報酬が出ますが、採用されなければゼロ円の世界です。1つのコンペへの応募数は少なくて30件、多いときは200件以上になります。その中で選ばれるのは1案だけなので、非常に狭き門です。おそらくその当時の仕事を時給に換算したら200円くらいなんじゃないかなと。

――いわゆる登竜門ですよね。心が折れそうになることはなかったのでしょうか?

それは意外にもなかったです。「実績を積むため」と割りきって、とにかく1年間応募し続けようと決めていましたから。結果として、コンペで採用された案件と、コンペをきっかけにクライアントからリピートで依頼していただいた案件を含めて、1年半後には仕事の実績が50件を達成しました。それを機に、コンペではなく、「プロジェクト形式」という、クラウドワークス上で募集している案件に応募するというやり方に変更しました。仕事の実績が50件あるおかげで、プロジェクト形式に移行してからもクライアントとの契約がかなり取れるようになって、一時期は取れ過ぎて回せなくなるくらいでした。ようやく、クラウドソーシングで食べていけると思いました。

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――成果が出るまでの間は、どんな生活をされていたのですか?

コンペに応募していた期間は、まさに引きこもり状態でした。外界との接点がありませんでした。今思えば、気分も鬱々としていたと思います。収入も月収にすると10万円弱くらい。一時期はお米も買えなくなって、ネットで安いものを探して、なんとかしのいでいました。でも、そんな経験をしたおかげで、食料の最低価格が全部頭に入りました(笑)。

それから、私たち家族は18万円くらいあれば生きていけるんだということも分かったので、今も仕事を受注するときには、「収入を減らしてでもチャレンジする価値があるかどうか」という判断基準を持つことができています。

――プロジェクト形式で契約が取れるようになってから収入が増えてきたなと感じましたか?

そうですね。クラウドワーキングをはじめて1年半くらい経った昨年の10月から一気に増えたという感じですね。今は、クライアントからロゴデザインからウェブのデザインまでトータルで依頼していただけるケースもあり、月収100万円を超えたこともあります。でも、契約が少ないときもありますので、だいたい平均すると月収50万円くらいになりますね。

――忙しくなると確定申告も大変じゃないですか?

まだ2回しかしたことがないので、大変さはあまり感じませんが、これ以上忙しくなったらどうしようかな……とは思っています。とはいえ、税理士さんにお願いできるほどの収入でもないのかなと。現在は大きな袋を用意して、領収書やレシートを入れて、月ごとにまとめて入力しています。経費は会議費用や打ち合わせ時の飲食費、交通費、書籍の購入費用などです。収入が上がったときに税金的にどうするのがいいのかなど、いろんな相談事を税理士にしたいと思うのですが今はまだ費用を出すほどではないかな、と思っています。

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育児中のフリーランスママがワーキングシェアできる仕組みを作りたい

――現在は、どのような仕事を手掛けているのでしょうか?

中小企業の新規事業の立ち上げに関する案件が多いです。ロゴからスタートして、名刺、パンフレット、ウェブサイトという順序でお任せいただくパターンがほとんどです。ロゴを受注して気に入っていただければ、専属デザイナーのように重宝してくださり、次の仕事も結構な確率でリピートしてもらえます。最近は、そうしたクライアントが何社かできてきたので、いろいろなジャンルのデザインを手掛ける機会をいただいています。

――未経験から約2年で高収入を得られるようになるのは、並大抵の努力では成し得ないことのような気がします。

私の場合は、コンサルティング会社で働いていた頃の経験が活きていると思います。企業の考え方や仕事の流れが理解できるので、クライアントが何を求めているかを考えたうえで企画提案することができます。デザインが採用される決め手になるのは、必ずしも“デザインの素晴らしさ”だけではないんです。会社としてどういう効果を狙っているかを考えて提案する、それが私の強みだと思っています。

――最後に、将来の展望について教えてください。

これからもフリーランスで仕事をしたいと思っています。新たな試みとしては、私と同じように子育て中のフリーランス人たちと共同で、企業組織に負けない、だけどすごく柔軟な働き方ができる組織作りをしたいなと思っています。すでにチーム作りは始めていて、ワーキングシェアのしくみを固めているところです。

フリーは自由ですが、ときに孤独を感じるものです。特に育児中の場合、子どもが突然病気になることもしょっちゅうですが、頼れる同僚がいません。もしワーキングシェアできるようになれば、納期に対する不安を解消し、安心して仕事を請け負うことができるはずですし、仕事のクオリティ向上にもつながるはずです。フリーランスは成長するための研修なども、なかなか受けられないので、チームのメンバーでそれぞれの知識を出し合って学び合い高め合える、そんなしくみを作りたいなと思っています。

(末吉陽子+ノオト)

取材協力

森脇 碌さん

百貨店の家具部門、建築関連の営業コンサルタント、建築デザインや施工を請け負う内装工事会社を経験。2014年にグラフィックデザイナー・イラストレーターとしてデビュー。新規オープンする店舗や施設のロゴや印刷物、ウェブデザインを中心に活動。2児の母として育児をしながら、在宅ワーカーとして働いている。

この記事の筆者

末吉陽子

編集者・ライター。1985年、千葉県生まれ。日本大学芸術学部卒。コラムやインタビュー記事の執筆を中心に活動。ジャンルは、社会問題から恋愛、住宅からガイドブックまで多岐にわたる。
▼公式サイト
http://yokosueyoshi.jimdo.com/

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