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2017/04/11 up

会社員と個人事業主って、具体的にどんな違いがあるの?(税金編)

text by 進藤 剛

会社員と個人事業主

勤めていた会社を退職して、個人事業主として独立する――。そんなとき、必ず知っておきたいのが税金における個人事業主と会社員の違いです。

今回は会社から独立して個人事業を始めた人のために、年末調整と確定申告の違い、個人事業主ならではの節税対策、必要な手続きについて解説します。

「収入」と「所得」の言葉の使い分け

「自分は収入が少ない」「来年は所得が多くなりそうだ」のように、日常生活では「収入」と「所得」が同じ意味として使われることが少なくありません。しかし本来は、「収入」と「所得」については次のように使い分けます。

収入……1月1日から12月31日までの総収入金額(額面金額)
所得……収入から収入を得るための費用を差し引いたもの

所得はそれを得る方法の違いにより、10種類に分けられています。たとえば、パートやアルバイト、会社員は「給与所得」、自営業やフリーランス、個人事業主は「事業所得」という所得の種類になります。そして所得の違いによって、収入から所得を計算する方法(算式)が異なります。

所得の違いにはどんな意味があるの?

では所得の種類によってどのような違いがあるのでしょうか。それぞれの所得の計算方法は以下のように定められています。

給与所得=給与収入-給与所得控除
事業所得=事業収入-必要経費

所得税は所得金額を元に計算されます。会社員が得る給与収入は、その所得金額を計算するのに給与収入から決められた金額(=給与所得控除)を差し引きます。給与所得控除とは、給与所得の計算上差し引くことができる金額で、給与収入の金額によって定められています。

■平成28年分

所得控除

出典:国税庁ウェブサイト

一方、個人事業主が得るのは事業収入。これは収入から自ら計算した「必要経費」の金額を差し引きます。必要経費は以下のように定められています。

必要経費とは、収入を得るために直接必要な売上原価や販売費、管理費その他費用のことをいい、たとえば、次に掲げるようなものがあります。
なお、家事上の経費は必要経費になりませんが、家事上の経費に関連する経費のうち、事業所得を生ずべき業務の遂行上必要である部分を明らかに区分することができる場合のその部分に相当する経費の金額は必要経費となります。
イ 売上原価
ロ 給与、賃金
ハ 地代、家賃
ニ 減価償却費
出典:国税庁ウェブサイト

会社員の「給与所得控除」が収入金額によって一律に決められているのに対して、個人事業主の必要経費の金額には決まりがありません。つまり、自分が事業に必要だとして使った費用については、所得の計算上差し引くことができるのです。

事業を営む上で、収入が同じだからといって、いつも同じだけの経費しかかかっていないわけではありません。個人事業主は確定申告をすることで、事業の実態に即した必要経費を計上することができ、適正な税額計算をすることができるのです。

年末調整と確定申告の違い

では次に、納めるべき所得税を誰が計算するか、という点について見ていきます。実はこの「誰が」という部分が、会社員と個人事業主の税金において非常に大きな違いになります。

会社員の所得税……勤務先など、給与の支払者が「年末調整」によって計算
個人事業主の所得税……個人事業主が自分自身で「確定申告」によって計算

このように、そもそも会社員と個人事業主は税金を計算する人(ところ)が違うのです。

もともと会社に勤めていた方であれば、「年末調整」のために勤務先から「生命保険料控除証明書」や「扶養家族の状況」を記入した用紙を提出した経験のある方も多いのではないでしょうか。これは会社が従業員の税金を計算する「年末調整」に必要な手続きの一部です。

会社員は会社に必要な書類や情報を提出することで、自分の所得税を会社に計算してもらうことができるのです。そして計算された税額は毎月の給与から天引きされます。これを「源泉徴収」といい、会社は従業員から源泉徴収した所得税を従業員に代わって納付する必要があります。つまり、会社員の税金の計算と納付は本人ではなく、勤め先の会社のするべきこと、というわけです。

一方の個人事業主ですが、会社員と違い、誰かが自分の税金を計算してくれるわけではありません。自分で収入金額、必要経費の金額などを計算しなければなりません。

また、そのための日々の帳簿付け(記帳)が義務付けられています。1月1日から12月31日までの収入、所得を計算し、そこから必要に応じて所得控除などを差し引いて、所得税額を計算します。そして翌年2月16日から3月15日までに確定申告し、所得税を納めます。

個人事業主が会社員と比べて有利なポイント

年末調整と確定申告の違いを見てきて「個人事業主は自分ですることが多くて大変そうだ」と思われた方も多いでしょう。たしかに確定申告のために準備しなければならないことは案外多く、会社員のころには必要のなかった税金についての知識も必要になります。また、今まで気にしたことのなかった自分の税額を目にすることになります。

しかし、個人事業主であることのメリットもあります。それは会社員では使うことのできない節税対策をとることができる、という点です。

 

■青色申告

青色申告は事前の申請や帳簿付けすることを条件に、税金上さまざまな優遇を受けられる制度です。これは、不動産所得や事業所得、山林所得のある人だけが受けることができます。

青色申告のメリットとしては、最高65万円を所得から控除できる「青色申告特別控除」や、事業で損失(赤字)が発生した場合に、翌年以後3年間にわたって繰り越して控除できる「純損失の繰越し」などがあります。

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白色申告と青色申告の違いと、それぞれのメリット、デメリット

 

■小規模企業共済

小規模企業共済制度は個人事業主が事業を廃止した場合などに、それまで積み立ててきた掛金に応じた退職金(共済金)を受け取ることができる制度です。この制度のメリットは掛金を払い込むときと共済金を受け取るときの両方で節税効果を得られることです。

掛金は月額1,000円から7万円まで、500円刻みで自由に選ぶことができ、払い込んだ全額がその年の所得控除の対象となります。また、年の途中で掛金の増額や減額、申し込み1年以内の掛金を前納することも可能です。これを活用すれば、最高168万円(掛金限度額7万円×12カ月+前納分7万円×12カ月)の所得控除を受けることができます。

そして、共済金を一括で受け取る場合は退職所得扱いとなるため、退職所得控除を受けることができます。
※途中解約による受け取りの場合は一時所得、分割受け取りの場合は公的年金等の雑所得扱いとなります。退職金制度のない個人事業主にとって、小規模企業共済制度は自分の意思で将来に備えることができるものであり、同時に節税メリットを受けることができる制度です。

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個人事業主でも退職金がもらえる小規模企業共済とは

会社員から個人事業主になったら、どんな手続きが必要?

個人事業主として仕事を始めた場合、日々の帳簿付けや確定申告だけではなく、さまざまな手続きを行う必要があります。ここでは事業を始めたときに対応すべき税務の手続きについてまとめます。

 

■個人事業の開業届出・廃業届出等手続

個人事業主が事業を始めたことを税務署に報告するための手続き。「所得税の青色申告承認手続」や「開業費」の経費計上のためにも手続きしましょう。原則、事業の開始から1カ月以内に行います。

 

■所得税の青色申告承認申請手続

青色申告で確定申告をするために必要な手続き。一定水準の記帳と正しい申告をすれば所得金額から最大65万円の特別控除を受けられるなどの特典があります。手続きは青色申告をする年の3月15日まで。1月16日以降に開業した場合は、開業日から2カ月以内。

 

■青色事業専従者給与に関する届出手続

一定の条件のもと、配偶者や親族に支払った給与の全額を必要経費として計上するための手続き。青色事業専従者給与額を必要経費に計上しようとする年の3月15日までに手続きをします。1月16日以降に開業した場合や、新たに専従者を増やす場合は、その日から2カ月以内。

 

■給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出

金額に関係なく、従業員、配偶者や親族(専従者)に給与を支払うことになった場合に税務署に報告するための手続き。給与を支払うことになったときから1カ月以内に手続きをしましょう。

 

■源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請

従業員から天引きした所得税を年2回にまとめて納めることができるようにするための手続き。原則として、従業員、配偶者や親族に給与を支払っている場合、支払いの都度、支払金額に応じた所得税及び復興特別所得税を天引きし、翌月10日までに納める必要があります。期限はないものの、特例が適用されるのは翌月に支払う給与分からです。

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個人事業主が開業するときに必要な税務上の書類と手続き

確定申告や届出手続など、個人事業主がしなければならないことは多くあります。ただ、正しい知識や情報を持っておくことで会社員にはないメリットを受けることができることもあります。せっかくならば、個人事業主であることを最大限に活かしたいですね。

(進藤剛+ノオト)