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2017/03/28 up

仕事を頼むなら「専従者給与」「専従者控除」「雇用」「外注」のどれ?

text by 杉本康

比較する男性

個人事業主として開業し、順調に仕事が増えてくると、誰かの手を借りたくなるもの。個人事業主が対価を支払ってほかの誰かに仕事をしてもらう方法には、「青色事業専従者給与」「事業専従者控除」「雇用」「外注」という4つの選択肢があります。それぞれの概要と手続き方法、メリット、デメリットを解説します。

「青色事業専従者給与」「事業専従者控除」「雇用」「外注」とは?

「青色事業専従者給与」「事業専従者控除」「雇用」「外注」という4つの選択肢は、大きく2つに分類できます。

「青色事業専従者給与」「事業専従者控除」……配偶者や親族に仕事を頼む場合
「雇用」「外注」……配偶者や親族以外の人に仕事を頼む場合の選択肢です。

「青色事業専従者給与」「事業専従者控除」は、どちらも配偶者や親族を雇い、給与を支払う方法です。従業員になった配偶者や親族を「専従者」と呼び、青色申告者の場合は「青色事業専従者給与」、白色申告者の場合は「事業専従者控除」と呼ばれる制度を活用できます。

「雇用」とは雇用契約を結び、従業員として働いてもらい、給与を支払う方法です。会社員、パート、アルバイトがここに該当します。「外注」とは、雇用をせずに仕事を委託し、外注費を支払う方法です。別の会社や個人事業主に仕事を依頼するケースや、近年流行しているクラウドソーシングなどは、ここに該当します。

「青色事業専従者給与」「事業専従者控除」「雇用」「外注」、それぞれに必要な手続き

4つのなかで「外注」以外は、人を雇うという選択肢です。「雇用」「青色事業専従者給与」「事業専従者控除」のいずれかを選ぶ場合、人を初めて雇うならば、下記の手続きをしておきましょう。

 

■人を初めて雇用する際にすべき手続き

(1)「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」の提出
従業員に給与を支払うことになった旨を、税務署に報告するための手続きです。従業員を雇ってから1カ月以内に届出書を提出する必要があります。

(2)「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」の提出
月に8万8,000円以上の給与を支払う際には、その従業員から所得税を源泉徴収する必要があります。この申請書を提出していないと、その徴収した金額を毎月税務署に納める手間が発生します。この申請書を提出しておけば、一定の要件のもと、年2回の納付手続きで済むようになります。提出の期限は特にありませんが、特例が適用されるのは、提出した日の翌月支払った給与からとなります。

(3)労働保険の加入・納付 ※「専従者」の場合は不要
「労災保険」と「雇用保険」を総称して「労働保険」といいます。これは従業員を守るためにある制度で、パートやアルバイトがたった1人でも雇用が発生した時点で手続きしなければなりません。必要な書類は、下記の4つです。
「労働保険関係成立届」……雇用してから10日以内に労働基準監督署へ提出
「労働保険概算保険料申告書」……50日以内に労働基準監督署へ提出
「雇用保険適用事業所設置届」と「雇用保険被保険者資格取得届」……ともに雇用してから10日以内にハローワークへ提出

「青色事業専従者給与」で、家族に払った給料をすべて必要経費に

配偶者やその他の親族に給与を支払っても、原則として必要経費にはなりません。家庭の中でお金が回っているだけだからです。しかし、特別な取扱いが認められているケースもあります。青色申告者の場合は、「青色事業専従者給与」。この特例を活用すれば、一定の要件のもとに支払った給与は全額が必要経費として認められます。ただし、事業専従者は控除対象配偶者や扶養親族にはなれません。

「青色事業専従者給与」を受けるに際しては、前項に挙げたいくつかの手続きをする必要があります。また、給与の支払いが始まってからは源泉徴収の手間もかかります。

 

■「青色事業専従者給与」の特例を受けるための要件

青色申告者は、以下の4点の要件をクリアすれば、家族に支払った給与は全額を必要経費として処理できます。

(1)青色事業専従者に支払われた給与であること。
青色事業専従者とは、次の要件のいずれにも該当する人をいいます。
イ 青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること。
ロ その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること。
ハ その年を通じて6月を超える期間(一定の場合には事業に従事することができる期間の2分の1を超える期間)、その青色申告者の営む事業に専ら従事していること。

出典:国税庁サイト No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除

「生計を一にする」といっても、必ずしも同居している必要はありません。離れて暮らしていたとしても、生活費などを仕送りしている場合は生計を一にしていることになります。従事期間については、専従者として働きだしてからの期間の半分を超える期間、従事していればいいということです。たとえば、7月から専従者になった場合は、「事業に従事することができる期間」が半年しかありませんので、3カ月より長く従事していれば大丈夫です。

(2)「青色事業専従者給与に関する届出書」を納税地の所轄税務署長に提出していること。
提出期限は、青色事業専従者給与額を算入しようとする年の3月15日(その年の1月16日以後、新たに事業を開始した場合や新たに専従者がいることとなった場合には、その開始した日や専従者がいることとなった日から2か月以内)までです。

出典:国税庁サイト No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除

もし5月1日から開業もしくは配偶者が仕事を手伝ってくれるようになった場合は、届出書の提出期限は、その年の7月1日です。

(3)届出書に記載されている方法により支払われ、しかもその記載されている金額の範囲内で支払われたものであること。

出典:国税庁サイト No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除

(2)の届出書には毎月何日の支払なのか、給与金額の上限、昇給の基準などを記載する欄があります。専従者への給料は、あらかじめ届出書に記載した通りに支払われる必要があります。

(4)青色事業専従者給与の額は、労務の対価として相当であると認められる金額であること。なお、過大とされる部分は必要経費とはなりません。

出典:国税庁サイト No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除

仮に飲食店のホールの仕事を手伝ってもらっていて、月に100万円の給料を支払うのは、一般的に高すぎますよね? こういった過大な給料は、税務調査が入ったときなどに否認の対象となります。

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「事業専従者控除」は、上限つきだが給与を必要経費にできる

白色申告者の場合は「事業専従者控除」を活用します。こちらは、実際に支払った金額ではなく、家族従業員の数や配偶者なのかその他の親族なのか、所得はいくらなのかに応じて計算される金額を必要経費としてみなすことができる制度です。ただし、事業専従者は控除対象配偶者や扶養親族にはなれません。

「事業専従者控除」を受けるに際しては、前項に挙げたいくつかの手続きをする必要があります。また、給与の支払いが始まってからは源泉徴収の手間もかかります。

 

■「事業専従者控除」の特例を受けるための要件

白色申告者でも、以下の要件を満たせば専従者の給与のうち一定の金額を控除することができます。

(1)白色申告者の営む事業に事業専従者がいること。
事業専従者とは、次の要件の全てに該当する人をいいます。
イ 白色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること。
ロ その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること。
ハ その年を通じて6月を超える期間、その白色申告者の営む事業に専ら従事していること。
(2)確定申告書にこの控除を受ける旨やその金額など必要な事項を記載すること。
出典:国税庁サイト No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除

「青色事業専従者給与」と違い、「事業専従者控除」は税務署への届出書の事前提出などが不要です。この控除は、確定申告をする際に収支内訳書の「専従者控除」欄に記入するだけで受けられます。

 

■「事業専従者控除」の計算方法と控除額シミュレーション

国税庁によれば、事業専従者控除の計算は以下のようになっています。

事業専従者控除額は、次のイ又はロの金額のどちらか低い金額です。
イ 事業専従者が事業主の配偶者であれば86万円、配偶者でなければ専従者一人につき50万円
ロ この控除をする前の事業所得等の金額を専従者の数に1を足した数で割った金額
出典:国税庁サイト No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除

「イ」はわかりやすいですが、「ロ」は少々複雑です。例を挙げて解説します。1年間で1,000万円を売り上げる個人飲食店があるとします。年間で400万円の仕入れと300万円の必要経費を使っていて、配偶者と高校に通う娘に仕事を手伝ってもらっています。

この場合、「イ」の金額は配偶者1人分と専従者1人分の金額を足したもの。「86万円+50万円=136万円」となります。

次に、「ロ」です。まず、「事業所得等の金額」は、売上金額とは違います。「所得」とは、売り上げから仕入れや必要経費の金額を差し引いたもの。「1,000万円-400万円―300万円=300万円」が、その額です。この300万円を「専従者の数に1を足した数」で割ります。専従者は配偶者と娘の2人ですから、「300万円÷(2+1)=100万円」が「ロ」の金額になります。

「イ」の136万円と「ロ」の100万円では、「ロ」の金額の方が低いので、100万円がこの人の控除額となります。

給与は消費税算定上の経費にできず、数種の手続きも必要……「雇用」はメリットなし!?

「雇用」とは雇用契約を結び、従業員として働いてもらい、給与を支払う方法です。給与は、消費税算定上の必要経費に計上することはできません。「雇用」を始めるためには、数種類の届出書を税務署などに提出する必要があります。また、人を雇い始めてからは労働保険料を負担したり、源泉徴収や年末調整などの経理上の手続きをしたりという手間も増えます。一定の規模を超えると社会保険の手続きや納付も義務になります。

ここまで見ると、「雇用」には何のメリットもないように思えるかもしれません。しかし、従業員の立場に立ち、働くモチベーションを考えるとどうでしょうか? 労働保険が完備されていると安心して働けますし、従業員としてその会社の一員になっていることでチームワークも高まるかもしれません。こうしたなかなか目に見えない部分も、事業を推進していく上で大きく影響してくるでしょう。

外注費は全額経費に! わずらわしい手続きもない「外注」はいいことだらけ!?

「外注」とは、雇用をせずに仕事を委託し、外注費を支払う方法です。「外注」をするために必要な手続きは特にありませんし、専従者を雇ったときのように源泉徴収の手間もなく、「雇用」をしたときのように労働保険料の支払負担もありません。

それだけでなく、「外注」は消費税の節税にもつながります。消費税算定の際に、「外注費」は必要経費算入をすることができるのです。それならば、すべて「外注」にすればいいのでは? と思うかもしれませんが、税務署はきちんと「外注」扱いできる基準を設けています。税務調査などで、これまで「外注」としていたものが「給与」と認定されると、多額の追徴金を納めることになります。

 

■「外注」が認められる要件

下記をすべて満たせば、その仕事は「外注」と認められます。

(1)従業員などの特定の「誰か」ではなく、誰でもできる仕事である
(2)仕事の進め方や勤務時間などの管理をされず、労働時間ではなく成果物に対して報酬が支払われる
(3)いかなる事情があっても成果物を納品しない限り、報酬を支払わなくてよい
(4)仕事に必要な経費を負担しない

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「雇用」と「外注」、人手不足解消にはどっちがいいの?

「事業専従者控除」「青色事業専従者給与」「雇用」「外注」という4つの選択肢は、それぞれに特有のメリットがあるため、単純に比較することは難しいかもしれません。自身の家庭の状況や事業の成長フェーズに合わせて、もっとも効率の良い方法を選択したいものです。

(杉本康+ノオト)